欲求の達成を邪魔するもの 演技の構成になくてはならない障害とは?

これまで登場人物の欲求について解説してきました。

まだ見ていない方は、そちらから先にご覧ください。

キャラクターの土台作り 登場人物が本当に達成したい事は?

欲求については理解していただけたのではないかと思いますが

欲求を理解するだけでは不十分です

 

例えば

「近所のドトールに行く」

コーヒーを飲みたいと言う欲求に基づいて、ドトールに行くという行動を起こしています。

とはいえ、これではドラマになりませんよね(笑)

少なくとも私は時間とお金を使って近所にドトールに行くだけの物語を観たいとは思いません。

 

 

でも

「伝説のコーヒー豆を求めてブラジルに行く」

これならドラマになりそうな気がします。

映画として成立しそうですよね。

 

さて

コーヒーを飲みたいという欲求は同じだとして

この二つの違いはなんでしょう?

 

笑っているタコ
欲求が強い!
距離が遠い!

どちらもその通りですね。

地球の反対側まで行くくらいですから強い欲求があるのでしょう。

 

先ほどの二つの設定の違いは

欲求達成に立ち塞がる障害の強さ

です。

 

まず物理的な距離の遠さがありますし、見知らぬ土地に行く恐怖や不安もあるでしょう。

それらの障害を押しのけてでも欲求を達成しにいくと言うところにドラマが生まれます。

言い換えればそれだけ欲求が強いと言う事です。

近所のドトールに行くだけなら、障害としては多少面倒くさいという事ぐらいですよね。

 

 

障害については以前こちらでもお伝えしました。

【簡単4ステップ!】リアリティ演技の方法 何から準備すれば良いの?

この障害というのはとても大事な要素ですので、今回は登場人物の障害についてより詳しく解説したいと思います。

 

障害の見つけ方 4つの種類

障害が脚本上はっきりしている場合は、しっかり台本を読んで障害となりうるものを見つけてください。

たくさん見つければ、それが自分の助けになります。

 

少年まんがの代表格である「ワンピース」にもいろんな障害が出てきますよね。

船が無かったり、強い敵が出てきたり、すんなり仲間になってくれなかったり。。。

それらを全て乗り越えて海賊王を目指す姿が人を惹きつけるのです。

「大学を卒業したら海賊王の父親の跡を継ぐことが決まってる」

こんなルフィが

「海賊王に俺はなる!」

と宣言したところで、そこにドラマは無いのです。

 

しかし問題は

台本上障害が描かれていないと思われる場合です。

この場合でも、魅力的なキャラクターになるためには、自分で障害を作っておく必要があります。

 

障害は4種類の中のどれかになります。

特にカテゴリーわけを覚えておく必要はありませんが、

障害がなんなのかわからない!

と言う時は一つの参考にしてみてください。

 

物理的障害

病気で死にかけていたり、足が不自由だったりといった、物理的な障害です。

時間がないなどの緊急性もここに含まれます。

 

大好きな映画の一つですが

「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」のアルパチーノは素晴らしかったですね。

観ていない方はぜひ観てみて欲しいです。

典型的な物理的障害の例です。

この作品でのアルパチーノの健在意識の欲求としては「自殺したい」ということです。

でも結局死にませんので、潜在意識の欲求は別にあることがわかります。

潜在意識の欲求としては「生きる意味を見つけたい」です。

その欲求の障害の一つとなるのが「目が見えない」ということです。

目が見えなくなっている事が、生きる意味を見失っている一つの要因である事が分かると思います。

 

心理的障害

自己否定や精神疾患、人間不信、被害妄想などです。

自分なんかが舞台に立っていいのかな?

という自己否定が舞台に立つ為の障害になっている方もいますし

謝りたい人がいるけど、自尊心が邪魔して謝れないときなんかもありますよね。

イジメられていた過去からくる被害妄想が障害になっている事もあります。

 

また、「ギルバート・グレイプ」でディカプリオが演じたような、精神障害なども含まれます。

※「ギルバート・グレイプ」はディカプリオが19歳の時の作品です。19歳であの演技って凄すぎる!

 

感情的障害

病気の父親を元気づけてあげたいけど、痩せ衰えた父親の姿を見たときの悲しいという感情が、父親に元気を出させたいという欲求の障害になることってありますよね。

新しいことにチャレンジするときの不安や恐怖なんかも感情的障害です。

 

「父と暮らせば」の美津江も感情的障害を持っています。

井上ひさし「父と暮せば」 日本人が読んでおくべき不朽の名作戯曲

潜在意識としては「木下さんを受け入れて幸せになりたい」という欲求がありますが、それを妨げているのは原爆で苦しんで亡くなっていった人たちへの「罪悪感」という感情的障害です。

分かりやすく「幸せになりたい」という欲求として説明してますが、本来キャラクターを分析するときは「幸せになりたい」という潜在意識の欲求では、キャラクターを特定することにはなりません。
なぜなら「幸せになりたい」という欲求は全人類共通のものだからです。

社会的障害

お金が無かったり、職業、身分などが社会的障害になります。

 

例えば映画「タイタニック」などがそうですね。

レオナルド・ディカプリオは身分違いの恋をします。

同じくレオナルド・ディカプリオが演じていましたが「ロミオ&ジュリエット」も社会的な障害を持った二人の物語です。

両家の対立という社会的障害を乗り越えて、二人は愛を手に入れようとします。

 

障害を考える時に気をつけること

障害について考える時、一番気をつけなければならないのは

障害を演じてしまわない事です。

障害を演じているというのは、すなわち障害にのまれて受け入れてしまっている状態です。

 

 

日常生活で言うと

自分が上手くいかないことを自分の容姿のせいにしたり(肉体的障害)

環境のせいにしたり(社会的障害)

悲しいことがあったらずっと悲しみに浸っていたり(感情的障害)

何か失敗をした時に落ち込んでいる自分に酔っていたり(精神的障害)

これらは障害を受け入れてしまっている状態です。

でも良く考えてみてください。

普段の生活でも、ウジウジした人とできれば一緒にいたくは無いですよね?

日常生活でもそうなのに、当然お金と時間を払ってまでウジウジした人を観たくはありません。

 

以前、子供たちと一緒にドラえもんのごっこ遊びをしたことがあります。

子供たちはドラえもんやジャイアン、スネ夫、しずかちゃんはイキイキと演じるのですが、のび太くんは誰もやりたがらないのです。

やったとしても楽しくなさそうです。

これは子供たちには「のび太くんが障害に負けてしまっている人物」と写っているからです。

しかし、実際は違います。

のび太くんは情けなく「ドラえも〜ん!」と泣き喚くことで、ドラえもんを味方につけるという欲求を達成しに行っているのです。

 

のび太くんのウジウジは消極的なウジウジではありません。

積極的な攻めのウジウジと言えるでしょう。

言わずもがなですが、のび太くんは勉強ができなかったりスポーツができなかったり、たくさんの障害を持っています。

のび太くんがそれらの障害にのまれているとしたら、あんなにハツラツと「ドラえも〜ん!」と叫びながら家に帰ってきません。

 

登場人物を演じるときは、どんな時も「障害に立ち向かっている人物」と捉えてください。

一見すると「障害に負けている」と思ってしまう人物でも

その人物なりの方法で障害を乗り越えて、欲求を達成しにいっている

と考えた方が、間違いなく登場人物はイキイキしてきます。

 

そして、登場人物が欲求に基づいて行動を起こすのは

障害を乗り越える事ができる

と信じているからこそです。

欲求への渇望が、障害を上回った時に、私たちは初めて行動を起こします。

 

だからこそ、大きな障害を持ち込んでください。

そして障害を上回るエネルギーで欲求を達成してください。

それを観て観客は興奮します。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?

今回は障害について解説しました。

 

困難な道をいく姿は、観ている人を興奮させます。

なぜなら

ほとんどの人は困難な道をいくことができないからです。

 

パレートの法則というのを聞いたことがあるでしょうか?

 

パレートの法則とは

80:20の法則とも言われる。
経済において、全体の大部分は20%が占めるという考え方。
例えば売上のほとんどを20%の優良顧客が占める。
20%の優良社員が会社のほとんどの売上を作っている。など

 

私は俳優にもこのパレートの法則は適用されると思っています。

障害に負けて欲求の達成を諦める80%の人がいる中で、どんな障害にも負けずに欲求を達成しにいく20%の人。

この20%の人が、物語のほとんどを引っ張っています。

 

そしてパレートの法則は実生活でも同じなんじゃないでしょうか?

 

諦めずに行動を起こし続けられる人って、やはり20%くらいだと思います。

いや、体感だと20%よりも少ないかもしれませんね。

 

物語を引っ張る20%になるために、普段の生活から20%の人間でいられるよう自分を律していきましょう。

 

今日もありがとうございました!

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