前回台本における潜在意識の欲求について紹介してきました。
見ていない方は是非そっちを最初に読んでみてください。
「欲求」の代わりに「目的」と言ったりもします。
記事内でも「目的」と書いてる部分もありますが、同じ意味なので安心してください。
台本に向かう際はまず「台本全体を通した潜在意識の欲求」という土台をしっかりさせておく必要があります。
ちょっと長いので以降「全体の欲求」と書きますね。
人間の生理的な欲求を3大欲求と言ったりしますが、台本も登場人物に対する考え方も人生と同じです。
全体の欲求は、人間としての根源的な欲求になります。
今日は引き続き土台作りをテーマに紹介します。
全体の欲求を掴んだら、次はシーンごとの潜在意識の欲求についても考えていきましょう。
引き続き難しい話ですが、知っていると知らないとでは今後の俳優人生が変わってきます。
是非最後まで頑張ってみてください。
全体の欲求はこの3種類!人間の根源的な願望とは?
結論から言うと
Love
Power
Survive
この3つです。
Power(力)
復讐劇を演じる場合は、ほとんどの場合登場人物の全体の欲求は力になります。
サスペンスなんかも力であることが多いです。
「過去に子供を殺された母親」
「相棒を犯人との銃撃で失った刑事」
こういったキャラクターを演じる場合、絶対ではないですが
「奪われた力を取り戻したい」
と言う全体の欲求になることが多いです。
子供を失った母親は、日常生活を営む力を奪われていますよね?
相棒を失った刑事もそこに囚われていることで、自信を失っています。
つまり力を奪われている状態です。
- 絶対的な力を手に入れたい
- 奪われた力を取り戻したい
- 男としての力を取り戻したい
自分が演じるキャラクターは台本全体を通してどの欲求を満たす行動をしているのか考えてみてください。
物語の結末が「キャラクターの死」なのであれば、そのキャラクターは死ぬ事によって力を取り戻していると考えられます。
死は、苦しみからの解放ですからね。
Love(愛)
ラブストーリーなどは愛のカテゴリーになりやすいです。
これも絶対ではありませんので気を付けてください。
- 真実の愛を見つけたい
- 無償の愛を手に入れたい
- 愛し愛されたい
全体の欲求としてはこういったものが考えられます。
やはり最後に「キャラクターの死」が描かれる場合もありますが、死ぬことで目的を達成していると考えられます。
「ロミオとジュリエット」などがそうですね。
あの二人は死ぬことで永遠の愛との繋がりを手に入れています。
Survive(命)
ロードムービーなどはサバイブの可能性が高くなります。
戦争ものなどにも多いですね。
全体の欲求としては
- 生きる理由を見つけたい
- 生きる道を見つけたい
- 生きた証を残したい
- 家族を守りたい
シーンごとの潜在意識の欲求
台本全体を通した潜在意識の欲求とは別に、シーンごとの潜在意識の欲求も考える必要があります。
そして、シーンで達成したい欲求は常に全体の欲求を支えています。
例えば「異性とデートする」というシーンを考えてみましょう。
このシーンの潜在意識の欲求として考えられるのは
全体の欲求が「愛されたい」という愛のカテゴリーのキャラクターであれば「私の事を好きになってほしい」
「力を取り戻したい」という力のカテゴリーのキャラクターであれば「お前を利用したい」
「生きる道を見つけたい」というサバイブのカテゴリーのキャラクターであればどちらの可能性もあります。
潜在意識の欲求が行動に及ぼす例として「異性とのデート」を考えてみましょう。
「私の事を好きになってほしい」という潜在意識の欲求を持っているとして、以下のシーンを想像してみてください。
高校から少し離れた駅。デパートがあるので、日曜日は人が多い。
9時50分に待ち合わせ場所についた。まだあの人は来ていない。
10時2分、あの人が現れた。
あの人の制服以外の恰好は初めて見た。
「私のことを好きになってほしい」という潜在意識の欲求があると、シーンにおける行動が変わってきます。
待ち合わせ場所に向かう歩き方。
人込みの中での「あの人」の探し方。
待ち合わせ場所での待ち方。
制服以外の「あの人」の見方。
すべてです。
行動だけではなく、受け取り方も変わってきますね。
また別で説明しますが「心の中の声」も変わってきます。
全体の欲求とも通じる部分ですが、シーンの欲求を考える時は抽象的に考えるのではなく、具体的な文章にしてください。
潜在意識の欲求は演じるのではなく、自分事として落とし込む事が重要です。
漠然と考えるだけでは深い部分に落とし込むことは出来ません。
潜在意識の欲求に目を向ける時のポイント
潜在意識の欲求を考える時にいくつか注意するポイントがありますのでまとめてお伝えします。
一度自分で台本を分析してみて、以下に当てはまっていないか確認してみてください。
知識を得ることも大事ですが、やはり実際に自分で考えてみるのが上達の近道です。
人間は潜在意識では常に利己的である
今のロシアとウクライナの問題には多かれ少なかれ皆さん心を痛めていると思います。
実際にボランティアや募金活動に参加している方もいるかもしれません。
平和を願う気持ちは素晴らしい事です。
しかし、ボランティアに参加するという行動の元になっている潜在意識の欲求はなんでしょう?
- みんなから褒められる
- 自分は価値のある人間だと思える
シーンの中での欲求は必ず相手を含むものにする
「愛を伝えたい」
そうじゃないと、相手とやり取りをする必要がありませんからね。
誤りたいなら、やり取りしていないで会ってすぐに謝ればシーンはおしまいです。
人間は達成出来ると信じられる事しか行動に移さない
日常生活でもそうですが、我々は自分が達成可能だと信じる事しか行動には移しません。
例えば今これを読んでくれているあなたは
「読むことで演技力が向上する」
と信じてくれたからこそ読むという行動を起こしてくれています。
または「時間つぶしができる」
と信じるからこそ読んでくれているわけです。
受験勉強をするのも、ダイエットをするのも、自分には達成可能だと信じるからこそです。
あなたが演劇部にいるとしたら
サッカー部の夏の大会でレギュラーに選ばれたい
という欲求を持ったとしても行動を起こしませんよね?
登場人物も同じです。
欲求が分かったら、このキャラクターはそれが達成可能と信じているということを理解してあげましょう。
最後に
今回は潜在意識について解説してきました。
覚えておいて欲しいのは
潜在意識は演じる際にはまったく意識しない
という事です。
こちらでも触れている、放っておくということですね。
「私の事を好きなってほしい」という潜在意識の欲求があると行動が変わってくる。
という事をお伝えしましたが、潜在的にあるだけで、日常生活では意識はしていません。