演技とは
想像上の世界で真実に生きる能力
言い換えれば
想像上の世界で真実に行動する能力
であるという事を以前ご紹介しました。
Acting is doing
まだ読んでいない方はこちらも参考にしてください。
このサイトに来てくれたと言うことは、少しでも演技力を向上させたいと言う思いを持っているんじゃないでしょうか?そこで質問なのですが そもそも演技ってなんでしょう? いるか先生[…]
そして、行動の土台は「欲求」になります。
「演技が上手くなりたい」
という欲求があるからこそ「本を読む」「演技レッスンに通う」「映画を観る」などの行動が生まれるわけですね。
これから数回に渡って、台本を演じるにあたって一番重要な部分となる
登場人物の欲求
というものを詳しく解説していきます。
まず知っておいて欲しいのは
人間には潜在意識と顕在意識がある
という事です。
人間には潜在意識と顕在意識が9:1の割合で存在していると言われています。
つまり、演じる登場人物の潜在意識に目を向けなければ
役作りの9割に失敗しているという事ですね。
まずはこの潜在意識について考えてみましょう。
本日は
キャラクターの土台作り 登場人物が本当に達成したい事は?
というテーマで紹介していきたいと思います。
潜在意識ってなに?
人間の潜在意識はオーストリア心理学者であるフロイトによって発見されました。
我々人間は、意識していようがしていまいが、みんなこの潜在意識によって突き動かされています。
例えば
「おもちゃが欲しい」
と駄々をこねている子供を考えてみましょう。
この子供の潜在意識の欲求は何かわかりますか?


- 親から愛されているという確証が欲しい
- 自分に注目してもらいたい
- 何をしても受け入れてもらえるという実感が欲しい
我が家にも子供がいますが、上の子が駄々をこねる事で欲求を達成しにいくと、下の子は聞き分けを良くする事で欲求を達成しにいきます。
逆もあって、下の子が駄々をこねれば上の子が聞き分けが良くなります。
その時一番有効と思われる「潜在意識の欲求に基づいた行動」をチョイスしているわけですね。
もう一つ、身近な具体例を挙げてみましょう。



〇〇さんも君の事をすごく褒めてたよ!
・日常生活でも我々は自覚する事なく、潜在意識の欲求に基づいた行動をとっている。
台本全体を通した潜在意識の欲求とは?
では、今度は台本の登場人物の潜在的な欲求を考えていきましょう。
登場人物は台本に登場して、様々な行動をします。
その行動は冒頭でお伝えしたように、欲求に基づいています。
そして、台本全体を通して登場人物は欲求を満たしていきます。
登場人物はストーリーを通して何を満たしたいのか?
を考えてみてください。
台本に向き合う際に
最初は持っていなくて、最後には手に入っているものは何か?
と考えるのがポイントです。
メソッドなどを勉強した方は全体を通した欲求のことを「超目的」という言い方をしたりします。
超目的という言葉も、アメリカだと「登場人物の目的」という意味で使うことが多いですが、イギリスだと「台本が役に求めるテーマ」といった意味で使っているように思います。
たまに誤解している方がいますが、潜在意識の欲求と顕在意識の欲求は必ずしも一致しません
顕在意識と潜在意識に矛盾があるからこそ、人間は複雑で愛おしい存在になります。
最近子供と観たディズニー映画を例に出します。
「ミラベルと魔法だらけの家」
簡単にあらすじを説明しますと
マドリガル家では5歳の誕生日を迎えると、魔法の才能を家から与えられていた。ミラベル以外は。
なぜかミラベルは5歳を迎えても能力を与えられる事はなく、成長した後も普通の女の子である。
そんななか、家族の崩壊の危機が訪れる。
ミラベルは家族を救うために奔走する。
大人が観ても楽しめる映画ですので、良かったらご覧ください。
ちなみに、この先の話はネタバレを含みますので、まだ観てない方はお気をつけください。
さて、この作品の主人公であるミラベルの、台本全体を通した欲求はなんでしょう?


才能の象徴となる家のドアが、ミラベルが触ると光を失います。
それと同時に自分を囲んでいた大人たちの顔は、どんな才能を与えられるんだろう?と言う期待の表情から一気に失望の表情へと変わっていきます。
5歳の女の子にしてみればトラウマです。
その後もミラベルは1人才能を与えられる日を待ち望みますが、やはり自分にだけは特別な才能が与えられません。
徐々に家族がミラベルに向ける視線も変わってきたようにミラベルには感じられます。
どうして私だけが特別な才能を与えられないの?
私は家族に必要とされていない人間なんじゃ無いかしら?
と言うところからミラベルと魔法だらけの家はスタートしています。
冒頭は家族の中で唯一ミラベルよりも年下の男の子が、5歳の誕生日を迎えたというシーンです。
周りの大人たちはまたミラベルのように失敗してしまったらと心配しています。
以上の事から考えると、ミラベルは最初の段階では
自分がマドリガル家の一員としてどう振る舞えば良いのか
を見失っています。
特別な才能が無く、家族に貢献できていない自分を受け止めきれ無いんですね。
だからこそ劇中でたびたび
「私は素晴らしいマドリガル家の一員なんだから!」
というセリフが登場します。自分に言い聞かせているのです。
ただし、これを意識的に演じようとすると非常に説明的な演技になります。
あくまでも潜在意識のお話です。
そして物語の最後では、家の長であるおばあちゃんとも仲良く出来るようになって、家族みんなに受け入れられて物語はおしまいです。
ミラベルは家族みんなに必要とされていると言う実感を得る事ができました。


潜在意識の欲求に突き動かされて(ミラベル自身は気づいていませんが)家族を救う為に奔走するのです。
まとめ
長くなってしまったので、今回は前編・後編に分けたいと思います。
ちょっと難しい話だったと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
後編ではより具体的に、潜在意識の欲求を活用するテクニックをお伝えしますので、是非そちらもご覧ください。
潜在意識に目を向けるという事は、とても大事な考え方です。
今後も台本に向かう上での技術を随時紹介していきますが、「潜在意識下に取り込む」という事が土台になってきます。
聞きなれない言葉ですが、しっかり理解していきましょう。
本日もありがとうございました。