俳優に求められる資質とは?年代別に変わる周りからの見られ方

俳優に求められる資質ってなんでしょう?

 

これは演出家一人一人が別の答えを持っています。

 

例えば平田オリザさんは著書で

「コンテクストが近い俳優。または独特なコンテクストを持っている俳優」

が求める俳優の基準だと仰っていました。

 

詳しくは著書を読んでいただきたいのですが

この2冊はセットで何度か読んでるので記憶が確かでは無いですが、確か「演技と演出」の方にそんな記述があったはずです。

 

つまり「演出家が作りたい世界を正確に表現してくれる俳優、または全く違う世界を提示してくれる俳優」

というようなことです。

 

しかし先ほども言いましたが、平田さんがそういう基準を持っているというだけで、演出家一人一人が違うのです。

というか違っているべきなのです。

それが作風の違いになるので、みんな同じでは面白く無いですもんね。

 

ということで

俳優に求められる資質とは?

と銘打って見たものの

細かい部分は作品によって変わる

ということになります。

 

じゃあ考えたって仕方ないじゃん!
確かにその通りなんですが、とはいえ通底する部分もあります。
本日はこの通底する部分だけに絞って、私の考えをお伝えしていこうと思います。

 

俳優に求められる資質とは?

昔からよく言われているのは「感性」ですね。

感性はもちろん必要な前提条件ですが、これだけではいけません。

いや、シンプルな人物であれば、感性だけで大丈夫とも言えます。

しかし複雑な人物を演じる場合は「感性」だけでなく「知性」が必要になります。

 

 

この「知性」に関しては、必要な場合とそうでない場合があります。

深く考えて役作りをしたことが、逆に作品の邪魔になってしまうという場合も往々にしてあります。

 

極端な例ですが、ドラマの中で刑事に質問されるというシーン

刑事   「坊主頭でトレーナーを着た男が来ませんでしたか!?」

通行人A 「あっちに走っていきました!」

こんなシーンを考えてみてください。

通行人Aの登場シーンはこの部分だけだとします。

 

知性をフル動員して通行人Aのバックボーンを考えるとすると

Name
昼のこの時間に歩いているということは、仕事をしていないのかな?もし無職なら、日常的に不安を抱えた人物の可能性があるよね。家族構成はどうだろう。結婚はしてるのかな?その場合子供は?奥さんは昼間から自分が街をうろついてる事を知ってるのかな?最近リストラされて奥さんにも言えてないとしたら?もしかしたら奥さんには後ろめたい気持ちを抱えているかもしれない。だとしたら、ここは近所ではないにしても、できるだけ人目は避けたいはずだよね。

こんな感じでしょうか?

通行人Aといえども、深めようと思えば役を深める事はできます。

 

ただし

作品上は通行人Aのバックボーンは求められていません。

こんなバックボーンを持っていたとしたら、演技に何かしらの影響は出ます。

その演技は観ている人に「ん?」という一瞬の違和感を抱かせることになります。

結果として、ストーリーの邪魔をする事になります。

 

もちろん、通行人Aのその後のシーンがあるなら、先の展開への布石として違和感を抱かせるのは効果的です。

 

ですので

作品のことはとりあえず置いておいて、とにかく自分が人の目に止まりたい!

というなら、知性を動員して深くバックボーンを作っておくのが良いでしょう。

しかし、作品のことを考えるなら、役を深めすぎるのは考えものです。

 

年代が変われば俳優に求められる質も変わっていく

「感性」と「知性」のバランスは変わっていきます。

当然ながら学習すればするほどに「知性」が強くなっていきます。

そうなるとみんな「感性」を忘れがちになってしまいますが、あくまでベースとして必要なのは俳優としての「感性」です。

 

そして、これまで「感性」だけでやってきた人が「知性」にスイッチする際、壁にぶつかることが多いです。

あくまで一般論にはなりますが、年代別に考えてみましょう。

 

20代以下の俳優に求められる資質

10代〜20代は知性など必要ありません。

もちろん学んでおくことは必要ですが、演じる際は細かいことを考えずに

大きな声で、一生懸命演技をすることを心がけましょう

 

あなたの「感性」のみで演じれば大丈夫です。

むしろ、それがあなたの魅力になります。

 

これははっきり言えますが、知性で30代以上の俳優に勝とうとしても不可能です。

 

滑舌の練習はしてください。

20代以下の俳優の場合、低い評価をされるほとんどの場合は

「何を言ってるか分からない」

ということです。

 

30代の俳優に求められる資質

30代以上の俳優の場合は「感性」だけでなく「知性」が必要になります。

 

30歳になったばかりの俳優は戸惑うでしょう。

なぜなら、30歳からガラッとオファーを受ける役の質が変わるのです。

 

今までの「感性」に任せた力押しでは乗り越えられない役にも出会います。

 

具体的に言うと、例えばこの年代から親の役を受けることになります。

もちろん自分自身に子供がいれば役を掴むのもすんなり掴めると思いますが、今の社会では30歳で子供のいない俳優はたくさんいるでしょう。

子供のいない俳優が、子供のいる役を演じるにあたっては、綿密なリサーチが必要になります。

もちろん「知性」無くして成り立ちません。

 

40代の俳優に求められる資質

40代になると俳優としてのキャリアもかなり長い(と、少なくとも周りからは思われている。)年代です。

 

「感性」も「知性」も磨かれていますね。

そして、この年代になると

役によってはあえて「知性」を使わない

求められる役割によってはあえて「感性」を使わない

と言ったことも求められます。

 

部活に例えると、キャプテンのような立ち回りです。

キャプテンて、試合でも点を決めれば良いわけでは無いですよね?

チーム全員の力を最大に引き上げるために、あえて自分は引くということが求められるのです。

 

後天的に身に付けられる技術の話

資質とは別に、俳優に必要な技術というのも、挙げればキリがないくらいにあります。

 

その全てを鍛え上げるのは

残念ながら不可能です

 

アクション作品に出たいなら殺陣は必須の技術になるでしょうし、ミュージカルに出たいならダンスや歌唱力が必要になるでしょう。

自分のなりたい俳優像を思い浮かべて、そこに近づくための技術を修得するべきです。

 

 

もちろん殺陣や日本舞踊を修めている俳優は、アクションや時代劇を演じていなくても体の使い方が綺麗です。

歌唱指導を受けている俳優は声の使い方が上手いです。

良い影響が出るのは間違いないので、学ぶことが苦でないならドンドンやった方が良いでしょう。

 

しかし

もし殺陣が好きなわけじゃないなら

もし時代劇に出たいわけではないなら。

別の事に時間を割いた方が効率的です。

 

だって殺陣とかダンスとかやっておいた方が、仕事も増えるんじゃない?
もちろんその通り!でもね、仕事を増やす目的なら、殺陣は効率的じゃないよ。だって時代劇って一年に何回作られてる?大河ドラマ以外に映画が何本かくらいだよね?
これは知り合いのキャスティングプロデューサーに聞いた話ですが
殺陣が出来る俳優以上に求めているのは、看護経験のある俳優だそうです
だって、病院ものって毎クール何かしらドラマやってますもんね。
ですが看護経験のない人は、所作が分からないのです。
これはもはや演技力は関係ありません。
つまり、俳優の仕事が欲しいなら、殺陣を何年もかけて学ぶよりも看護の資格をとった方が効率的ということです。
ですが、まずははっきり喋れるようになったり、声を飛ばすための訓練をしましょう。
俳優としての基礎技術が無いのに看護の資格をとっていたら、その人はもう看護職員ですからね。
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