この日は「パラレル・マザーズ」をにて観てきました。
「パラレル・マザーズ」は前々から気になっており、公開初日に新宿シネマカリテを訪問。
前日は遅くまで仕事をしており、コンディションはあまりよくありません。

とはいえ前売りでチケットを買っていまして、今さら変更をすることも出来ず鑑賞。
そんな中での「パラレル・マザーズ」体験でしたが
面白かった!
というのが個人的な感想です。

とにかく素晴らしい映画だったよ!
とは言え好みはあるでしょうし、好きなテイストじゃない方もいると思います。
でも実際に子供がいる方や歴史が好きな方はハマるんじゃないでしょうか。
「パラレル・マザーズ」の概要(ネタバレなし)
上映時間は2時間。
主演のペネロペ・クルスは「パラレル・マザーズ」で第78回のヴェネツィア国際映画祭にて最優秀女優賞を受賞しました。
さらに第94回アカデミー賞に主演女優賞と作曲賞でノミネート。
主演女優賞には先だって公開されている「スペンサー ダイアナの決意」のクリステン・スチュワートもノミネートされていましたね。
この日は朝早くから子供のお弁当製作のために起床。「パンダのおにぎりが入ったお弁当が良い」と言う娘の希望に答えて、インスタグラム内をくまなく見て回りました。無事お弁当を作り終わり子供を幼稚園に送り届けたのが9時前。昼過ぎか[…]

「パラレル・マザーズ」のあらすじ
「最愛の娘は他人の子供だった」
そもそも家族ものが好きな私としては、このキャッチフレーズに惹かれていました。
物語は2人のシングルマザーであるジャニス(ペネロペ・クルス)とアナ(ミレナ・スミット)を中心に進行します。

ジャニスは40歳という高齢で子供を身籠りました。
しかし相手は奥さんのいる男性。
出産を望まない相手と別れて、1人で育てる決意をします。
病院の隣のベットには同じく出産間近のアナ。
2人は入院中に親密になっていきます。
無事に出産を終えて退院後、ジャニスはセシリアと名付けた自分の娘を愛し、子供との生活の幸せを噛み締めていました。
しかし、久しぶりに会った元恋人のアルトゥロ(イスラエル・エルハルデ)から「自分の子供とは思えない」と告げられます。

ジャニスは「自分の父親に似ている」と主張しますが、実際は父親の顔は写真でも見たことがないのです。
元々ジャニス自身も自分と似ていないことが気になっていたのでしょう。
遺伝子検査を受けることにしました。
その結果は「生物学的に100%親子ではない」というもの。
ジャニスは同じ日に出産を迎えたアナの子と取り違えられたのではないかと疑念を抱きますが、その疑念は自分の中に秘めて日常を過ごします。

それからしばらくして偶然立ち寄ったカフェでアナと再会。
さらにジャニスを悩ませる衝撃的な事実を知ることになるのでした。
「パラレル・マザーズ」のスタッフ・キャスト
正直なところ、ペネロペ・クルス以外の俳優はほとんど知りませんでした。
ですがどの俳優も演技がとても丁寧で素晴らしかったです。

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
71歳のスペイン映画界の大御所です。
「母と娘の関係」は作品の中で触れることが多いです。
ペドロ・アルモドバル監督にとって、重要なテーマなのでしょう。
たくさんの作品を撮っていますが、代表作は「オール・アバウト・マイ・マザー」や「ペイン・アンド・グローリー」など
ジャニス役:ペネロペ・クルス
この方はいつ見ても美しいですね。
オードリー・ヘップバーン的な「完璧な美しさ」を持ってるなぁと思います。
ペドロ・アルモドバル監督の映画には何度も出演しています。
アナ役:ミレナ・スミット
長編映画への出演は今回が2作品目だそうです。
にも関わらずペドロ・アルモドバル監督から「偉大な発見だ」と言わしめる才能。
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ちなみに今回のキャスティングチームは、彼女のインスタグラムで存在を知って出演オファーをしたそうです。
インスタグラムもやっておくもんですね。
アルトゥロ役:イスラエル・エレハルデ
ペネロペ・クルスの元恋人であり、法医人類学者。

人間の骨から情報を読み取る専門家。
犯罪捜査や身元不明人の特定をしたりする人たち。
アルトゥロは主にこっちのテーマに絡んでくる役ですね。
テレサ役:アイタナ・サンチェス=ギヨン
もう1人のシングルマザーであるアナの母親。
女優の夢を追い続け、娘の出産のタイミングで大きな舞台に主演が決まる。

この方の役どころもとても面白かったです。
そして演技がうまい!すごくナチュラルにクセのあるキャラクターを表現していました。
エレナ役:ロッシ・デ・パルマ
ジャニスの職場の上司であり、友人。
強烈な印象を与える人でした。
ロッシ・デ・パルマも何度もペドロ・アルモドバル監督作品に出演しています。

ブリヒダ役:フリエタ・セラーノ
フリエタ・セラーノは1シーンしか出てきません。
しかし強烈な印象を残します。
1シーンにも関わらず、一気に映画をラストに引っ張っていく牽引力がありました。
「パラレル・マザーズ」の背景となるスペインの内戦について

でも知ってから観るとより理解出来るんじゃないかな?
1936年からスペインでは内戦が始まります。
そしてその内戦によってできた国民同士の溝はいまだに影響を与えています。
1936年にスペインの共和国体制に不満を持った保守層のお金持ちたちの支持を得て、軍隊が反乱を起こしました。
その後1939年に反乱軍が勝利してから、1975年に反乱軍の党首だったフランシスコ・フランコがなくなるまで独裁体制が続きます。

共和国支持者には労働者や農民が多かったわけですが、内戦の初期にはそういった方々の虐殺も多数行われたそうです。
「パラレル・マザーズ」で描かれているジャニスの親戚や祖父たちがそうでした。
銃殺され、自分で掘らされた穴に多数の被害者がまとめて埋められたそうです。

フランコ政権下では言論の統制も行われました。
2017年にスペインのカタルーニャ地方が独立を宣言しましたが、このフランコ政権下での民族弾圧の傷が今も尾を引いているのでしょう。
「パラレル・マザーズ」の感想と考察(ネタバレあり)

性の価値観が飲み込みにくい!
ジャニスはアナと再会したのち、アナの子供(ジャニスが自分の子供ではと疑念を持っている)が死んだことを聞かされます。
本当に子供が取り違えられていたのだとしたら、自分の子供が知らないうちに死んでいたことになります。
アナはとても傷ついていますが、ジャニスも非常にショックを受けました。同時にアナの存在に恐怖を感じます。

この時のジャニスは恐怖と自分の倫理観がぐちゃぐちゃに入り混じった混乱した状態だったのではないかと思います。本来は遠ざけたいはずのアナに、一緒に住むことを提案します。
メイドとして給料を出すという提案に喜んで飛びつくアナ。
で、この後がちょっと飲み込みにくいのですが、2人は一緒に暮らす中でレズビアンの関係になるんですね。

知識として性の対象が男性にも女性にも向く方がいるのはわかっていますが、ストーリー上の進行が突然でちょっとびっくりしました。
もう一回観たら何か気がつくなかなぁ・・・?
2人が関係を築いたことで、ジャニスを訪ねてきたアルトゥロにアナが嫉妬を感じ、2人は言い合いになってしまいます。
アナの「過去に縛られずに未来に目を向けるべきじゃない?」と言う主張から物語はラストに入っていきます。
テレサが売れない舞台女優なのにやけにお金持ちっぽい!
テレサはアナの母親であり、女優を仕事としています。
旦那さんとは離婚しており、テレサもまたシングルマザー(親権は旦那さんにあるけど)
舞台の主演が決まって、チャンスだと息巻いているところを見ると、成功していない女優なのでしょう。
アナの出産直前、病院に面会に来たにも関わらずオーディションでうまくいった事をマシンガントークで語るようなお母さんです。

それにも関わらず、家にはお手伝いさんが働いています。
家もそれなりに広く、お金に困ってるようには全く見えません。


さらにどうやら別れた理由はテレサの浮気っぽくて、たくさん援助してもらえるとは思えないんだよね。

これについては映画の中で特に説明されないんですが、おそらくはテレサの実家がお金持ちなのでしょう。
劇中ではジャニスとエレナとブリヒダは親戚が弾圧を受けてきた側として描かれています。
内戦初期には銃殺されて、お墓とも言えない場所に無造作に埋められた人たちの子供たちです。
そしてテレサの実家がお金持ちということは、フランコ政権下で弾圧されない側だった。
つまり家が経済的に裕福な保守派側だったということですね。
テレサ自身「上流階級として身についた振る舞いが、女優としての成功の足を引っ張った」と自己分析するセリフがありました。


だからこそ
「過去に縛られないで未来に目を向けないと」
と主張するアナに対して、ジャニスは
「若くたって歴史を勉強しないとダメだ。自分のルーツを知ることで自分の場所が決まる」
としっかりめに説教します。

ジャニスは自分のルーツに言及したことで、娘の出生を隠している自分に矛盾を感じて、アナに遺伝子検査の話をすることになります。
「パラレル・マザーズ」のまとめ
気軽に見れる作品ではないし、エンターテイメント的盛り上がリも少ないです。
でも個人的にはずっとドキドキしながら観ていました。
映画を観て自分の感情が動かされるのが好きです。
そして俳優にとっても、普段から感情を動かしておくのはとても大事なことです。

あと、今回の「パラレル・マザーズ」のようにスペインの内戦について興味を持たせてくれるのも映画の良いところですね。
よかったら是非観てみてください!
そしてさらに良かったら、コメントから感想教えてくださいね!
最後までご覧いただきありがとうございました!