前回は鼻濁音について紹介したわけですが、今回は無声化について解説してみたいと思います。
鼻濁音についてはこちらを参照してください。
ここ最近発声と滑舌のクラスを担当している関係で、関連の記事が多くなっております。今回紹介する鼻濁音も、レッスンに通った経験のある方は一度は耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。 くらげちゃん鼻[…]
無声音も法則がややこしいのですが、頑張ってみてくださいね。
今回ご紹介するようなことを常に意識しているのはきついのではないかと思います。
とは言え滑舌を良くする為にはかなり大事なテクニックですので、ざっくり理解しておきましょう。
と言う事で今回は
- 無声化ってなんだ?
- なんで無声化が必要なの?
- いつ無声化すれば良いの?
といった事を紹介していきます。
ちなみに無声音は学者の方々が専門に研究されているようなものです。
無声音に関することだけで一冊の本になったりするものですが、今回は俳優が知っておくレベルの事だけにとどめます。
とどめます、というか、私自身俳優が知っておく以上のことは知りませんが(笑)
出来るだけわかりやすく解説していきますので、是非最後までご覧ください。
無声音と有声音の違い
まずは無声音てなんなんだと言うところから解説します。
一言でいうと
- 声帯が振動しないのが無声音
- 声帯を振動させて発声するのが有声音
になります。
①まずは普通に「あー」という声を出してみてください。②声を出しながら喉に手を当てるとビリビリと振動しているのが感じられるかと思います。③喉に手をあてたまま、今度は子供を静かにさせる時のように「シー」と言ってみて下さい。
※口に人差し指をあててやるアレです
どうでしょう?
声帯が振動していないのが分かるかと思います。
今度は「しー」と普通に言ってみて下さい。
そうするとまた喉は振動していますよね?
これは母音が無声化することで起こる現象です。
「し」の音だったらローマ字で書くと「si」になるけど、無声化してると「s」だけになるってことなんだ。iを発声しないって事だね。
母音の無声化がなぜ必要なのか 表現者が無声化を習得するメリットとは
でも無声化したほうが言いやすくなる場合が多いんだよ。
例えば
というセリフをこんな風に読んでみて下さい。
いかがでしょう?
無声化させている方が、圧倒的に言いやすいかと思います。
この読み方だと完全に音を飛ばしてるので厳密には無声音ではないのですが、無声化させるメリットを体感出来るのではないでしょうか。
そうなんです。
無声化させると、滑舌の助けになるのです。
無声化がいまいち分からないという方は「ししししししししし」って連続で早く言ってみてください。
無声化できないと早く言うことは出来ません。
例文をいくつか紹介します。
自分で練習するときは、喉が震えてるかどうかでチェックできるので分かりやすいですね。
無声音に馴染みがない方は、ぜひ練習してみてください。
四角の部分が無声音になります。
無声化の例文・早口言葉
- 菊栗・菊栗・三菊栗・合わせて菊栗・六菊栗
(きくくり・きくくり・みきくくり・あわせてきくくり・むきくくり) - 医師と鹿は主君の酒器を割った
(いしとしかはしゅくんのしゅきをわった) - かすかに光が見えたので、その学生はぴくりと動いた。しかし足は言うことを聞かない。両親から下北沢の喫茶店で叱られた時を思い出す。親不孝をしてしまった不始末を解消するすべは今も見つからない。
(かすかにひかりがみえたので、そのがくせいはぴくりとうごいた。しかしあしはいうことをきかない。りょうしんからしもきたざわのきっさてんでしかられたときをおもいだす。おやふこうをしてしまったふしまつをかいしょうするすべはいまもみつからない)
無声音の種類 無声化する音はこれ!
母音が無声化する音というのは、ほぼほぼ決まっています。
とりあえず一覧で紹介しますね。
- カ行「き」「く」「きゅ」
- サ行「し」「す」「しゅ」
- タ行「ち」「つ」「ちゅ」
- ハ行「ひ」「ふ」「ひゅ」
- パ行「ぴ」「ぷ」「ぴゅ」
この15種類になります。
サ行・カ行・タ行・ハ行・パ行のYU・U・I の音が無声化するよ!
とは言え「きゅ」「ちゅ」「ひゅ」「ぴゅ」に関しては使い所がほとんどないので覚えなくても構いません。
これ以外にも「例外的に無声化する音」もあったりしますが、そんなこと言い出したらいよいよ訳わからなくなると思うので省きます。
母音の無声化ルール① 無声化条件は「K・S・T・H・P」
続いて無声化が起きる基本ルールを説明します。
さっき説明した15種類の無声音。
この音の後に「K・S・T・H・P」のいずれかが来ると、挟まれた「YU・U・I」の音が無声化するのです。
言葉で説明してるとキツくなってくるかと思いますので、とりあえず例を紹介します
- 企画(きかく:KIKAKU)
- タクシー(たくしー:TAKUSHII)
- 歯科医師(しかいし:SIKAISI)
- すき焼き(すきやき:SUKIYAKI)
- 酒池肉林(しゅちにくりん:SHUTINIKURIN)
- 地下(ちか:TIKA)
- 勤め先(つとめさき:TUTOMESAKI)
- 悲観(ひかん:HIKAN)
- 不孝(ふこう:HUKOU)
- ピカルの定理(ぴかるのていり:PIKARUNOTEIRI)
- デンプシー・ロール(でんぷしーろーる:DENPUSIIROURU)
こんな感じです。
一応先ほど紹介した音(ほとんど使わないと紹介したもの以外)11種類を例として挙げました。
改めて例を作るにあたって思いましたが「ぴ」「ぷ」に関してもあまり該当する言葉がなかったですね。
ちなみにですが「ピカルの定理」は10年ほど前にフジテレビ系で放送されていたバラエティ番組です。
「デンプシー・ロール」は漫画「はじめの一歩」にて主人公の幕ノ内一歩の必殺技として紹介されていました。
あ、でも「ぷ」だったら「キャプテン」とかもそうだね。
無声化ルールの例外
これはかなりややこしい話なので、こんなこともあるんだなーくらいに思っておいてください。
無声化する音がいくつも続く場合は後の音を有声化します。
そうしないと、何を言ってるか分からなくなっちゃいますからね。
例を挙げると
- 色彩(しきさい:SIKISAI)
- 執筆活動(しっぴつかつどう:SHIPPITUKATUDOU)
など。
執筆活動はルール通りなら「しっぴつ」全てが無声音になりますが、実際は四角で囲った部分だけです。
しかしながら非常にややこしいのが、例外の例外ケースとしてサ行が続く場合は後の音が無声化されるのです。
例を挙げると
- 資質(ししつ:SISITU)
- すすきの(すすきの:SUSUKINO)
など。
四角で囲われた部分が無声化します。
資質の場合最初の「し」が無声化されてると「皮質」「地質」なのか分かりにくいしね。
母音の無声化ルール② 文章の最後という条件が入ると無声音になる
句読点の「、」や「。」の前の音は無声化します。
句読点というか、文章を区切る時には無声化という感じですね。
一番目にすることが多いのが「〜です」の「す」です。
これは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
でも、このルールは流動的なものなんだ。
無声音は言ってしまえば「流す音」になります。
ですので、ルール通りだとしても強調したい場合には無声化させない方が良いでしょう。
例えばこんなナレーションの場合
「。」の前は企画の「く」です。
ルール通りだったら無声化するのですが、この場合「企画」を強調したいですよね。
というか、強調したいからこそ体言止めになってるわけですが。
ですのでこの場合の「く」はしっかり有声音で伝えた方が良いでしょう。
無声化のまとめ
無声音のルールをまとめて紹介しました。
ルールと言われると絶対守らないといけないような気がしてしまいますが、鼻濁音と同じく絶対に無声化しないといけないわけではありません。
「有声音だけど、軽めに無声化してみる」みたいな事でも大丈夫ですし、言いにくくなければそもそも無声化しなくても構いません。
一番良くないのは、無声化しないといけないと思ってセリフが固くなってしまう事です。
俳優の皆さんは無声化どうこうに囚われず、滑舌的に言いにくいセリフがあったら思い出すくらいのつもりでいてください。
最後にまとめますと
- 無声化する音は15種類
- 無声化する時の条件は基本2つ
- とは言え、こだわりすぎず柔軟に
ということですね。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました!