TVドラマ、映画、CM、舞台といった各メディアにも出演しています。大きい作品もあれば、自主制作の作品もありました。20年間、とにかく演技とは何かということを考え続けてきました。
スタニスラフスキーやマイケル・チェーホフ、イヴァナ・チャバック、ステラ・アドラー、サンフォード・マイズナー、などなど。
実際に師匠について勉強した理論もあれば、自分で学び実験しながら確かめていったものもあります。体に落とせたものしか、方法論としては使えないと思っています。
今回はそんな私が
モノローグの演じ方
というテーマで解説します。
モノローグに限らず、長台詞の時には必須となる演じ方になりますので、是非参考にしていただきたいと思います。
●モノローグを演じる時に理解しておく構成
●モノローグを演じる時に気を付けるべきポイント
モノローグや長台詞に緊張してしまう気持ちは分かりますが、やはり長いセリフは見せ場であることも事実です。
しっかり学んで、バシッと見せ場を決められるようにしておきましょう!
そもそもモノローグとは?
演じ方を説明する前に、まずはモノローグとはなんなのかを説明しておきますね。
モノローグというのは、一人語りのことです。普通台本は対話(ダイアローグ)によって進行しますが、モノローグというのは語りかける相手がいません。
映画やドラマなんかでも使われたりする演出手法の一つで、主に登場人物の心の内を観客に説明するために用いられます。
求められた時に体現できるのが俳優の能力です。
モノローグを演じる前に まずは完璧にセリフを覚えよう!
いきなり当たり前の事を言うようですがセリフは完璧に覚えましょう。
モノローグのレッスンではセリフを覚えたつもりになっている人が意外と多いです。今モノローグに取り組んでいる人は一度振り返ってみて欲しいのですが
セリフをブロックごとにおぼえてしまっていませんか?
モノローグはひとつのセリフの中で、内容的にいくつものブロックに分かれている事がほとんどです。
しかし当たり前の事ですが、キャラクターはブロックに分けて喋っているわけではありません。
このようにAのブロックのあと一段空けてBのブロックが始まる書き方になっている場合もありますが、これは脚本家の方がキャラクターの思考のまとまりを分かりやすくしているだけです。
ブロックごとにセリフを覚えていると、思考の流れがブロックごとに止まってしまいます。
セリフを覚える時はブロックにわけずに、ひとまとめとして覚えてください。
モノローグの演じ方 始まりと終わりを意識しよう!
モノローグを演じる時に覚えておいて欲しいのは
- 一番言いたいことは一番最後にある
- 言いたいことについて感じていることは最初からある
この2点です。
例外もありますがモノローグは基本的にはこの構成で書かれています。長いセリフの場合は間に他の役からの合いの手が挟まる場合もありますが、基本的な構成は同じです。
モノローグの具体例
それでは具体例を使って説明しますね。
違いを理解していただくために、最初は何も考えずに読んでみてください。
『アンドロイド107』本文
作:渋谷悠 原案:ナナ
あなたは、私を解体することができますか?
私は、アンドロイド107。個体識別番号はありません。
107型は、私しか作られていないからです。
炊事洗濯、一生分の予定管理をこなす105型。
夜の営みに対応する機能を追加された106型。
私はその次に開発されました。私の能力は「助けを求めること」です。
瞳孔の拡大、わずかな心拍数の上昇を検知しました。興味を持ってくださったのですね。300以上の言語で「助けて」と言うことができます。
英語:Help.
中国語:jiù mìng.(ジウミンッ)
スペイン語:Ayuda.(アユゥダ)
ポルトガル語:Soccoro.(ソッコフォ)
フランス語:A l’aide.(アレッデュ)どんな状況でも助けを求められるように、1000以上のテーマが設定されています。
ランダムサンプリングします。
テーマ19:銃口を突きつけられた時。助けて。
テーマ345:家事をしている最中、パートナーの協力を得たい時。助けて。
テーマ803:レストランのメニューが多すぎて何を選んで良いかわからない時。助けて。
テーマ520:不眠症でベッドに入ってから2時間眠れない時。助けて。また、殆どのテーマはレベル調整も可能です。
テーマ19、銃口を突きつけられた時の助けてはレベル30まであり、先ほどは15でお見せしました。
こちらが最大設定値の30です。助けて!
そしてこちらが最小設定値の1です。助けて。楽しんで頂けて幸いです。しかし、私のこの能力を、手品のようにお見せするのは、果たして正しい使い方なのでしょうか?
人間は、本当に助けが必要な時に「助けて」と言えないことがあるそうですね。なんという不具合でしょう。私たちにそのようなことが起きたら、直ちに不良品扱いです。
しかし開発者は私に言いました。私は、助けを求めることができない人たちの代わりなのだ、そしてそれは、尊い役目なのだと。
開発者の言葉を再生します。「107、あなたには理解できないかも知れないけど、私は、私に欲しかった能力をあなたに授けたの。私は、子供の頃、あなたにとっての私、開発者のような存在に、とても辛い目にあわされた。もし時間を戻せて、その時の私に何か伝えられるとしたら、こう言うの『助けてって言いなさい』…107、あなたは私が作った最高傑作よ」
再生を終了します。
開発者はこの数日後、自ら命を断ちました。その日の朝、開発者はお気に入りの香水を付けて、長い時間窓の外を見つめていました。私はよくその時の映像をプレイバックします。映像の最後に、私の方を向いて、微笑んでくれるんです。私に搭載されたメモリで推測できることは、彼女が言えなかった一生分の「助けて」が私の中に詰まっているのではないか?ということです。
では、バッテリーが尽きるまで、助けを求め続けることが私の役目なのでしょうか?
アンドロイドは何かの役に立つものでしょう?最低限の家事はできますが、私よりも前に製造された105型、106型より明らかに性能が劣ります。戦闘能力は一切ありません。身体能力も人間の平均値より低く設定されています。開発者は、私を不完全に作ることに、多大な労力を払ったように思えます。全て一人で出来てしまったら、助けを求めないからでしょうか?私はなんのために作られたのでしょう?最高傑作というのは何かの冗談だったのでしょうか?何度プレイバックしても答えが出ません。お願いです、私を解体してくれませんか?バッテリー持続時間はまだ153年残っています。
テーマ1:存在意義が知りたい時。レベル10。助けて。
レベル30。助けて!レベル50。助けて!!
レベル100。助けて!!!助けて!!!助けて!!!(アンドロイド、助けを求め続ける)
こちらは渋谷悠さんが無料公開しているモノローグから引用させて頂きました。
引用した以外にもたくさん公開してくださっているので、モノローグ台本をたくさん読んでみたいという方はそちらのページもご覧ください。
→
渋谷悠さんのホームページ
このモノローグは非常にわかりやすいですね(想像の相手がいるので、モノローグというよりは長台詞という方が感覚的には近いですが)
アンドロイド107は「助けてほしい」という事を言いたくて、この長いセリフを話し出します。自分が存在する意味が分からないまま残り153年を過ごさなければいけない事に耐えられず、解体してほしいほどに絶望しているのがわかります。
そしてこの絶望は最初からアンドロイド107の中にあるのです。
それを理解した上で、最初の「あなたは、私を解体することができますか?」という言葉を発する事が出来るかどうかで、モノローグ全体の意味が全く変わってきます。
モノローグの演じ方のまとめ
- セリフはブロックに分けずに一連で覚える
- 一番言いたい事は一番最後にある
- 言いたい事に対して感じている事は最初からある
モノローグを演じる時に意識して欲しいのはこの3つです。
台本準備について知りたい方は、演技応用のカテゴリーを参考にしてみて下さい。
台本を演じるには、必ず準備が必要です。経験のある俳優は自然とやっていることではありますが、まだ演技の経験が浅いという自覚のある人は積極的に物語に触れて、想像力を養う訓練が必要となります。
毎日1本の映画を観ている人と何もしていない人とでは、一年後には間違いなくセンスに差がついています。
一日一時間でも本を読み続ければ、一年後には間違いなく読解力が上がっています。
これはちょっと考えればわかることですが、地道な努力を続けられる人は多くありません。
もしもあなたが地道な努力を続ける事ができれば、1年後、3年後、5年後には今と全く違う景色が見えている事でしょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!