ここ最近発声と滑舌のクラスを担当している関係で、関連の記事が多くなっております。
今回紹介する鼻濁音も、レッスンに通った経験のある方は一度は耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。
私も以前は鼻濁音を発声することは出来るものの、どの「がぎぐげご」を鼻濁音にすれば良いのかはっきり分かりませんでした。
鼻濁音を使うかどうかは、演じるキャラクターによっても違います。
ですので個人的には、鼻濁音にすべき場所は全て鼻濁音にしないといけないわけではないと思っています。
でもアナウンサーの役を演じる時などはしっかり鼻濁音を使えないといけませんよね。
いつ鼻濁音になるのが正しい標準語なのかというルールを分かっておくにこしたことはありません。
ということで今回は
- そもそも鼻濁音とは?
- なぜ鼻濁音が必要なのか?
- 鼻濁音の発声方法とは?
- 鼻濁音にする時のルール
- 鼻濁音の考え方
といったことを紹介していこうと思います。
どうして鼻濁音が必要なのか っていうかそもそも鼻濁音てなんなんだ?
鼻濁音は鼻に息を抜けさせながら発声する「が・ぎ・ぐ・げ・ご」と「ぎゃ・ぎゅ・ぎょ」の事です。
はっきり濁音で「がぎぐげご」と言うと、キツく汚い印象になるのですが、鼻濁音で発声すると柔らかい印象になります。
標準語のルールに照らし合わせると、四角く囲った部分が鼻濁音です。
鼻濁音で発声すると「が・ぎ・ぐ・げ・ご」と言うよりも「にゃ・に・にゅ・にぇ・にょ」に近い印象になるのです。
って言ってるみたいな印象になるって事ですね。
鼻濁音を使ってると柔らかい印象になるんだけど、地域によっては全く使わない地域もあるし、キャラクターによっては柔らかい印象にならないほうが良いこともあるよ!
鼻濁音のやり方と練習方法 鼻濁音の例文と早口言葉も紹介
変に強調されて気持ち悪い喋り方になっちゃうから気をつけて!
鼻濁音の「が・ぎ・ぐ・げ・ご」は「にゃ・に・にゅ・にぇ・にょ」で呼吸が鼻に抜ける感覚と全く同じです。
「にゃ・に・にゅ・にぇ・にょ」に置き換えて発声してみて、その時の感覚のままで「が・ぎ・ぐ・げ・ご」に置き換えて喋ってみましょう。
鼻濁音になってるかどうかのチェックとして、自分の鼻をつまんでみましょう。
鼻濁音は声を出す時に鼻からも息が抜けるので、鼻を摘んでいると変な声になります。
※鼻濁音以外も全て変な声になっちゃうと言う方は、そもそも喉が開いていません。こちらの記事を参考にしてみてください。
相手までセリフが届いてないって言われたよー!これどういう意味なの?色んな可能性があるけど、今日は声の出し方から考えてみよう! 相手までセリフが届いてない 相手に影響を与えられていない[…]
と言うことで、鼻濁音を使う例文や早口言葉を紹介します。
是非練習してみてください。
※四角で囲った部分が鼻濁音になります。
鼻濁音例文・早口言葉
- ・武具・馬具・武具・馬具・三武具馬具、合わせて武具・馬具・六武具馬具
(ぶぐばぐぶぐばぐみぶぐばぐ、あわせてぶぐばぐむぶぐばぐ) - ・巣鴨・駒込、駒込・巣鴨、親ガモ・子ガモ、大ガモ
(すがもこまごめこまごめすがも、おやがもこがもおおがも) - ・私が鹿児島での修行を志願したのは憧れの先輩がいたからですが、緊張でガチガチになってしまい怪訝な顔されました。
(わたしがかごしまでのしゅぎょうをしがんしたのはあこがれのせんぱいがいたからですが、きんちょうでがちがちになってしまいけげんなかおをされました)
知っておきたい鼻濁音の法則は二つ!余裕があったら例外の4つも覚えよう!
鼻濁音のやり方について解説してきましたが、冒頭でお伝えした通り鼻濁音を正しく使えないと俳優を出来ないわけではありません。
どちらかというと「どのタイミングで鼻濁音になるのが正しい標準語なのか」というルールを分かっている方が重要かと思います。
鼻濁音を使うかどうかはキャラクターによって変わるので、正しい標準語を喋りそうなキャラクターの場合は事前に鼻濁音の場所に印をつけておきましょう。
法則①接続詞・助詞の「が・ぎ・ぐ・げ・ご」
「接続詞」とか「助詞」と言われるとウッてなる気持ちは分かります。
私もそうなので。
「動詞」や「形容詞」はまだしも、助詞とか助動詞とか言うのは勘弁して頂きたいところです。
ただまぁ、例を挙げるとそんなに分かりにくいものでもありません。
私が〜
あなたが〜
〜なのですが、
その通りですが、
などですね。
ちなみに「ございます」は「ある」という動詞の丁寧語ですので鼻濁音ではありません。
さらにちなみにですが、藤子・A・不二雄先生の傑作マンガ「怪物くん」の中に出てくるオオカミ男の語尾でお馴染みの「〜でがんす」
これも「ございます」→「ござんす」→「がんす」ですので、鼻濁音ではありません。
※広島や山形、岩手などで使われる方言だそうです。広島の方言だとしたら、そもそも鼻濁音を使う文化ではありません。
さらにさらにちなみに、おじゃる丸のアオベエでの語尾は「〜でごんす」になりますが、こちらも同じ理由で鼻濁音ではありません。手塚治虫先生の「オムカエデゴンス」も同じです。
法則②単語の途中で入る「が・ぎ・ぐ・げ・ご」「ぎゃ・ぎゅ・ぎょ」は鼻濁音
単語の途中で入る「がぎぐげご」「ぎゃぎゅぎょ」は鼻濁音になります。
- 動画(どうが)
- 終業式(しゅうぎょうしき)
- 神奈川(かながわ)
- りんご(りんご)
- 優れる(すぐれる)
- 抗原検査(こうげんけんさ)
- 験担ぎ(げんかつぎ)
などなど、たくさんありますね。
ただまぁ実際に台本や原稿を読むときはそんなに頻繁に出てくるわけでもありませんが。
鼻濁音ルールの例外パターン4つ
基本的には先ほど紹介した二つがルールになります。
しかしながらちょっとややこしいのが、例外のパターンが結構あることです。
ということで例外のパターンを4つ紹介しますが、さらに例外の例外もあります。
そんな人は言葉の意味が強い時は鼻濁音にならないという原則だけ覚えてね!
例外①擬音は濁音
これも擬音と言われると分かりにくいので例を挙げます。
- ぐるぐる
- ゴクゴク
- ギンギン
- ぎゅうぎゅう
- ギャンギャン
みたいな。
同じ言葉が2つ重なる場合は、途中に入る「がぎぐげご」「ぎゃぎゅぎょ」でも鼻濁音にはなりません。
例外②数字の5は途中に出てきても濁音
こちらもまずは例を挙げますが
- 交響曲第5番
- 小学5年生
※「しょうがくごねんせい」の「が」は鼻濁音 - 55人
※「ごじゅうごにん」の「ご」はどちらも濁音
単語の途中で入る「がぎぐげご」でも例で挙げたような数字の「5」の意味が強いものは濁音です。
ただし例外の例外がありまして
- 七五三(しちごさん)
- 十五夜(じゅうごや)
など、数字の五が入っているものの、慣用句になってるものは鼻濁音になります。
例外③二つの言葉が組み合わさってる場合
こちらもまずは例を挙げます。四角の部分は鼻濁音になります。
- お行儀(おぎょうぎ)
- お元気ですか(おげんきですか)
- 朝ごはん(あさごはん)
- 音楽学校(おんがくがっこう)
- 国立劇場(こくりつげきじょう)
- 参議院議員(さんぎいんぎいん)
例で挙げたように、言葉が二つ重なっている二つ目の言葉の最初の「がぎぐげご」は鼻濁音になりません。
だから単語の最初の「がぎぐげご」「ぎゃぎゅぎょ」は鼻濁音にならないという基本ルールと同じ考え方だよ!
ただしこちらも例外がありまして
- 株式会社(かぶしきがいしゃ)
- 夫婦喧嘩(ふうふげんか)
など、二つ言葉が合わさっているものの鼻濁音になるものもあります。
二つの言葉が合わさった時に後ろの言葉の最初が濁る「連濁」という現象が起こるときは、合わせて一つの単語という考え方になるのです。
その言葉一つで意味が通じない場合は二つ合わせて一つの言葉と考えるんだ!
例外④カタカナ表記の場合
最後の例外であるカタカナについてですが、かなり基準があやふやです。
一応のルールとして鼻濁音は日本固有の発声方法ですので、外国語には適用されません。
とりあえず例を挙げますと
- エネルギー
- プログラム
- イギー・ポップ
- コンピューターゲーム
などは濁音で大丈夫です。
ただ
- 曇りガラス
- イギリス人
などの漢字と合わさってカタカナが登場する場合は標準語としてはどっちもありです。
ガラスの加工技術を紹介するナレーションの中で「くもりガラス」という表現が出てきた時には濁音の方が適しているかと思いますが、「曇りガラスから眺めた景色は私の心を投影しているようだった」などの日本的な情緒表現の場合は鼻濁音の方が適しているかと思います。
さらに
- ソング
- ギャング
- ペンギン
- バーゲン
などの前後に「ン」が入る場合の「ガギグゲゴ」「ギャギュギョ」は鼻濁音になります。
とはいえこの原則も最近は変わりつつあるようですので、鼻濁音は廃れつつある表現なのでしょう。
鼻濁音のやり方と法則まとめ
いかがでしたでしょうか?
とりあえず「言葉の意味が強い時」「はっきり言いたい時」はルールが適用されなくても良いと思っておいてください。
色々と法則を説明しましたが、当然ながら演じるキャラクターによって鼻濁音の法則は無視してもいいんです。
ルールはあくまで「正しいと言われる標準語なら」という意味で考えてください。
ナレーションでも、例えばバラエティ番組などで
「CMの後、驚きの展開が!」
といったような煽り文句をよく聞くと思いますが、こういった強調したい場面では鼻濁音ではない方が良いと考えています。
もちろん鼻濁音を求められた時には対応できないといけませんので、とりあえず「にゃににゅにぇにょ」で感覚を掴んでおきましょう。
ということで本日は鼻濁音について解説しました。
俳優の皆さんが演じる時の参考になれば嬉しいです。
最後までご覧頂きありがとうございました!