演技の間とは? 俳優の間のとり方について2つの方法論で解説 演技の間は3種類!

日本的な演技論における間の取り方

日本的な考え方の方が即効性があると思いますので、こちらも紹介します。

 

江戸時代から、落語でも歌舞伎でも

師匠を見て学ぶ

と言うことが当たり前でした。

 

内面性に目を向けるのではなく、演じ方を真似ることで学びます。

言い方、動き方、呼吸、全てです。

表現力に重点を置いた考え方ですね。

 

これは実体験に照らし合わせてもそうなのですが、日本的な演技の方法論だけだと

演じる事が楽しくなくなってしまう瞬間が訪れる可能性が高いです。

演技がシステマチックになり、画一化されるので

自分じゃなくても良いんじゃないか?

と思ってしまうんですね。

 

それを超えた先には新たな領域にたどり着ける気もしますが、楽しくなくなると続ける事が困難になるのであまりお勧めはしません。

 

怒っているタコ
だったらなんで紹介するんだよ!

 

お勧めはしないのですが、プロとして日本で活動するなら、やはりこういった考え方も知っておくべきだとは思います。

ある程度器用に立ち回ることができないと、演技を向上させるまで現場に出れなくなってしまいますからね。

 

間とテンポ

間とテンポは近い意味で使われますが別の意味です。

「間を詰めて」と言われた場合

単純にセリフとセリフの間を短くして欲しいのか、テンポが悪くなっているのかを自覚出来ると良いですね。

 

この後解説しますが

セリフとセリフの間は空いているけど、テンポは良い

と言う状態はあります。

反対に

間があいてる訳ではないけど、テンポが悪い

と言う状態もあります。

 

間はそもそも全く空けないと言うことは不可能です。

それが例え0.1秒だったとしても、間は必ず生まれます。

 

しかしその間が

死に間になっている場合はテンポが悪くなります

死に間ではなく、いわゆる「間が埋まっている」と言う状態になれば、間はあんまり気にならないんですね。

怒っているタコ
「死に間」とか「間が埋まってる」とか言われても良くわかんないよ!結局感覚的な話なんじゃないの?
感覚じゃなくて、どんな場合が死に間と言われるのかははっきりしてるんだ!これからその事を説明するね!

 

演技の間の種類

ではどんな時に死に間になってしまうのか。

 

それを知ってもらうために

間には3種類ある

と言うことをまず説明します。

 

自分が間をとってるなーと思う方は、この3種類に照らし合わせて、自分の間がなんなのか考えてみてください。

物理的な間

セリフの前に間を空けているけれども、物理的に体は動いている時の間です。

部屋に女が座っている

男 (入ってきて)・・・!?びっくりした!

女 ・・・おかえり。

男 ・・・電気ぐらい点けろよ。

こんな台本があったとします。

それぞれ言葉の前に間をとるとしましょう。

 

物理的な間というのは

部屋に女が座っている

男 (靴を脱ぎ、部屋に入ってきて電気を点けて)・・・!?びっくりした!

女 (立ち上がりティッシュを探して鼻を噛んで)・・・おかえり。

男 (女に近づき、様子を伺いながらカバンを置いて)・・・電気ぐらい点けろよ。

こんな感じです。

実際の台本ではここまで()の指定はありませんので、物理的な間をとろうと思ったら自分で()内を作る必要があります。

 

生理的な間

生理的な反応を伴う間です。

先ほどのシーンを使って説明すると

部屋に女が座っている

男 (女に気づいてハッと息をのんで)・・・!?びっくりした!

女 (安心したのかひとしきり泣いてから)・・・おかえり。

男 (大きくため息をついて)・・・電気ぐらい点けろよ。

こんな感じです。

生理的な間というのは、主に呼吸の間です。

泣くのも「フッフッフッフッフ」と言う短い呼吸、または「あーーー」と言う長い呼吸ですからね。

呼吸を変えるとシーンのリズムが変わるので、何か影響を受ける出来事があった時によく使います。

 

心理的な間

呼吸や動きを伴いません。

表現としては、ただセリフの前に時間をとるだけです。

内面はもちろん働いていますが。

 

想像してみてください。

お友達と笑いながら話している時

急に友達の顔から笑いがスッと消えて、一点を見ながら黙ってしまった

 

これって、むちゃくちゃ怖いですよね。

観ていて違和感を感じるからこそ、観客としては一番想像力を掻き立てられる間になります。

 

しかし、

心理的な間は諸刃の剣です

うまく使えば効果的に観客をのめり込ませる事ができますが、多用するとただ間延びしたシーンになります。

 

心理的な間の注意点

演技に慣れていない人は、間をとることを怖がる事が多いです。

しかし、中途半端に間をあけるだけでは心理的な間にはなりません。

物理的な間、生理的な間と組み合わせても良いですが

心理的な間は心理的な間として別で考えてください。

微動だにせず、視線も動かさずに、しっかり間をとります。

ポイントで使えばかなり意味のある間になります。

 

間の種類の使い分け

基本的には

物理的な間か生理的な間だけ

を使ってください。

先ほど触れた死に間というのは、ほとんどの場合心理的な間になります。

 

心理的な間は要求された時だけに使うくらいに思っておいた方が良いでしょう。

 

物理的な間、生理的な間の場合

テンポは悪くなりません

演出家が音としてのリズムをつけたい場合は別ですが。

 

心理的な間は諸刃の剣と紹介しましたが、これには観客の想像力が関わってきます。

演技を見慣れていない観客にとっては、そんなに長く想像力はもちません。

だから、誰でも観れる地上波のドラマだと、心理的な間ってほとんどないよね!でも映画とかだと、そもそも映画館で集中して観ると言う下地があるから、多めに心理的な間を入れても大丈夫だったりするんだ。

 

「え?この間はどう言うことなんだろう?」と想像力を働かせた後は、どこかのタイミングで回収してあげる必要があります。

観客の集中力が低い場合は、回収までの時間が短くないと想像力をもたせることができません。

 

回収すると想像力を働かせていた観客は

「やっぱりね。そう言うことだと思ったよ」

と納得してくれます。

誰しも自分の想像が当たっていたと感じて気持ちよくなりたいのです。

 

一言ずつ心理的な間をとっていては、いつまで経っても想像力を回収されずに観客は疲れてしまいます。

そうなると想像の世界に引き込むことはできません。

 

先ほどのシーンですが

女 おかえり。

男 ただいま。もう帰ってたんだ

女 うん

男 メシは?

女 うん

男 (心理的な間)今日も暑いなぁ。もうベトベト。

女 しばらくこんな感じみたい。

男 そうなの?まいったな。

女 本当に、まいっちゃうよね。

 

心理的な間の使い方はこんな感じです。

この例では男に心理的な間を作りましたが、このやり取りの場合どちらがどのタイミングで心理的な間を入れても成立するかと思います。

観ていて「あれ?この二人何か問題があるのかな?」と思うはずです。

 

どちらかと言うと女の方が心理的な間を取りたくなる台本かと思いますが

心理的な間を作るなら、それ以外では心理的な間をとってはいけません

物理的な間・生理的な間はOKです。

 

誰が心理的な間を取ることが一番効果的なのか

これは演出家と相談の上で決めてください。

 

先ほどのシーンの後に例えば

  • 女が「他に好きな人ができた」と告白する
  • 女が男に浮気の証拠を突きつける
  • ガン宣告をされて余命半年と言われた事を告げる

 

と言う出来事が起これば、観ている人は「やっぱりね。何か問題があると思ったよ」と納得するはずです。

 

間の使い分けまとめ

・「間を大事に。もっと意味を持たせて」とか「間になってない」とは、心理的な間になっていないと言うこと

・「間が埋まってない」と言う場合は、物理的な間、もしくは生理的な間になってないと言うこと

・心理的な間はほとんど使わない

 

最後に

今回は演技の間のとり方について解説してきました。

 

演技の方法論が違えば、同じ成果を目指すにしても向かい方が変わってきます。

内面性を重視した役作りをする方は前半のメソッド系の方法を参考にしてください。

表現を大事に考える方は、後半の部分を参考にしてもらえれば分かりやすいかと思います。

 

しかし何にしても、頭で理解しているだけでは不十分です。

実際に演じてみながら考えてみてください。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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