桃太郎の演じ方 みんな知っている桃太郎の物語を俳優的な視点で読み解く

以前お話しした潜在意識の欲求について

読んだけどよく分からない!

というお声をいただきました。

 

普段はレッスン中に説明しながら、実際に俳優としてどういった違いがあるか体感してもらうのですが、話だけだと分かりにくいかと思いますので改めて実際のストーリーを使って解説します。

 

今回は

みんな知っている桃太郎の物語を俳優的な視点で読み解く

というテーマでお伝えしていきます。

 

難しい話ではありません。

俳優が演じる時は、こんな風に物語を読んでいくんだなぁ

と遊び心を持って読んでもらえれば嬉しいです。

 

もしも俳優として桃太郎という作品を演じるなら、こういう部分に目を向ける

というあくまで仮定の話ですし、紹介する解釈が絶対でもありません。

どういう読み解き方をするかが俳優の個性になりますので、皆さんもぜひ一度考えてみてください。

昔話の代表格!桃太郎についての概要

さて

一応確認ですが、桃太郎のお話しは知っていますよね?

今更説明するまでもないですが、一応まとめておきます。

桃太郎のストーリー

昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へ洗濯に。
ある日おばあさんがいつものように川で洗濯していると、川の上流から大きな桃が流れてきました。
おばあさんは桃を家に持って帰り、食べようとすると中から可愛い男の子が出てきました。
おじいさんとおばあさんには子供がおらず、その子に桃太郎と名付けて大切に育てました。
桃太郎はすくすく育ちます。
ある日のこと、桃太郎は鬼ヶ島の悪い鬼の噂を聞いて、鬼退治に出かけることになりました。
おばあさんにきび団子を作ってもらい、桃太郎は鬼ヶ島を目指します。
道中、犬、猿、キジに会い、きび団子を欲しいと言われます。
桃太郎は鬼退治を手伝うならという条件を出し、犬・猿・キジをお供に加えます。
鬼ヶ島についた桃太郎は、犬猿キジの助けを借りて鬼を成敗しました。
鬼が溜めていた宝物を奪い、桃太郎はおじいさんおばあさんの待つ家へと帰りました。
そして、おじいさんとおばあさんといつまでもしあわせに暮らしましたとさ。

 

桃太郎の物語は諸説あります。

ずっと口伝で伝わってきたものだったので、語る人によってオリジナリティを足していったのでしょう。

ですが、何が正しい桃太郎の物語なのかは今回の本筋ではないのでひとまず置いておきます。

桃太郎の登場人物

登場人物について、物語上でてきた事実のみまとめておきます。

決して情報は多くないですね。

おじいさん

職業:柴刈り
結婚相手:おばあさん

おばあさん

職業:専業主婦
結婚相手:おじいさん

桃太郎

出生:桃から産まれた
性格:正義感が強い

犬・猿・キジ

状態:空腹

住処:鬼ヶ島

普通はもう少し脚本から読み取れる情報は多いのですが、これだけの情報で演じるのであれば自分の想像力を使う必要があります。

桃太郎の時代背景

本来なら脚本が描かれた年代を調べたりするのですが、桃太郎については明確には分かりません。

ほとんどの昔話の元と言われている「御伽草子」にも、桃太郎は載っていません。

本として最初に登場するのは江戸時代になってからです。

 

1200年ごろに描かれた「保元物語」では源為朝が鬼島に渡ったという記述があり、それが桃太郎の元になっているという説があります。

1614年に再建された福井県の氣比神宮では、桃から誕生する男の彫像があったそうなので、おそらくそれより前の時代から広く知られていたのでしょう。
※彫像が桃太郎であるという証拠は特に無いそうです。とはいえ桃から産まれる男を桃太郎以外に知りませんが。

 

以上のことから考えると

桃太郎は1200年〜1600年の間に語られ出した物語

と言えそうです。

 

とりあえず今回はその前提でお話しを進めます。

鎌倉時代〜関ヶ原の戦いくらいの時代となりますので、かなり厳しい時代に生まれた物語ということですね。

 

 

ちなみに

そもそもなぜ桃なのか?

ということですが

 

700年ごろに作成された「古事記」では、イザナギノミコトが桃を投げつける事で悪者を退治したといった記述があります。

桃が悪を退ける

といった認識があったんですね。

中国では元々桃を仙薬として大事にしていたので、おそらくは600年代から始まる遣唐使と共に日本にも中国の桃文化が伝わったのでしょう。

桃太郎に出てくる登場人物の分析

ここからは桃太郎に出てくる登場人物を演じるについて、どういった分析をするべきかについてお話ししていきます。

冒頭でもお伝えしましたが

解釈に正解はありません

それぞれが描かれている内容を元に想像を膨らませるべきです。

 

なので、あくまでも一つの可能性と捉えてください。

 

結論から言うと潜在意識の欲求としては登場人物全員が

奪われた力を取り戻したい

と言うことになります。

 

まだ見ていない方はこちらもご覧ください

潜在意識の欲求とは?台本全体を通した欲求はこの3種類!

戦国時代に描かれている作品だけに、力のカテゴリーのお話ですね。

桃太郎

物語の主役です。

桃太郎を演じるにあたって大事にしなければいけないのは

出生にまつわる部分です。

 

「桃から産まれた」

これは前提条件です。

目を向けるべきは

桃太郎自身はいつ自分の出生の秘密に気づいたか?

ということですね。

 

登場人物を分析する時に大事なのは

自分ごととして考える

ということです。

 

考えてみてください。

自分の両親から

「実はお前は私たちの本当の子供では無いんだ」

と告げられる状況。

無償の愛を与えてくれるべき自分の両親が本当の親ではないという事実。

大人なら受け入れられるかもしれませんが、幼い子供の場合は恐怖でしか無いですね。

 

桃太郎の場合は、両親代わりがおじいさん・おばあさんです。

今より平均寿命の短い時代ですので私たちの感覚の高齢者ではないかもしれません。

それでも同年代の友人の親と比べれば違和感は隠せません。

かなり早い時期に自分の出生については知らざるを得なかったと思われます。

もしも桃太郎が二時間の映画であれば、ここら辺も描かれることでしょう。

 

しかも本当の親は桃

「あいつは桃から産まれた」

と言うことで、いじめも受けた可能性もあります。

人間じゃないんじゃないか?と言う陰口も聞いた事があるでしょう。

だからこそ、頼まれたわけでも無いのにみんなを困らせる鬼を討伐しに行くんですね。

自分の価値を世間に認めさせたいのです。

 

以上のことから、桃太郎は誕生の時からすでに力を奪われている状態

と言うことがわかります。

 

また、桃太郎が力を手に入れるために生きている根拠として桃太郎の行動も挙げられます。

もしも桃太郎が愛を手に入れるために生きている人間であれば

鬼は成敗しません

 

「悪さをしないよう説得する」「改心させて村に迎え入れる」

など、別の行動をとったはずです。

 

力で解決するのは、桃太郎自身が力を求めているからこそです。

おじいさん

職業が柴刈りなのです。

ちなみに、芝刈りではなく柴刈りです。

 

雑木を集めて、燃料として売るという仕事ですね。

薪拾いと似た感じです。

 

若い時、体力に満ちている時ならそれなりの収入になったかもしれません。

しかし年と共に体は衰えていきます。

柴刈りをできる範囲も、若い時よりも間違いなく狭くなっています。

体が資本の職業ということを考えると、今は経済的に豊かなはずがありません。

ヘミングウェイの「老人と海」を彷彿とさせますね。

 

さらに、子供がいないのです。

桃太郎が産まれて、しっかり育て上げたところから推察すると、おそらく元々子供は欲しかったのでしょう。

元々子供が欲しい夫婦だったのだとしたら、桃太郎が現れる前はおばあさんを男として幸せに出来ていなかったと言うことになります。

 

 

これは大事なポイントですが、男にとって一番力を奪われる状態というのは

配偶者を幸せに出来ていない

と感じることです。

 

経済的な理由も相まっておじいさんの潜在的な欲求としては

男としての力を取り戻したい

ということになります。

まとめ

本当は登場人物の欲求を全員分紹介しようと思ったのですが、長くなりすぎるのでこの辺で切ろうと思います。

残りの登場人物に関しては、脚本解釈の練習として考えてみてください。

 

鬼はなぜ鬼ヶ島に住む必要があるのか?
犬・猿・キジは、桃太郎に出会う前はどういう状況だったでしょう?

※おじいさんとおばあさんの子供に関しては「いたけど、何らかの理由で亡くなった」と解釈することも出来ます。おじいさんは鬼ヶ島に向かう桃太郎を引き止めていませんので、子供を過去に亡くしているとすると鬼が原因でしょう。

 

今回は俳優としてもしも桃太郎を演じるなら

ということで登場人物の分析をしてみました。

 

初回なので誰もが知っている桃太郎というテーマで説明しましたが、次回からは名作戯曲の紹介も兼ねて普通の脚本の分析もしていきたいと思います。

 

今日もありがとうございました。

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