前々から気になっていた作品をようやく観に行きました。
それが「LAMB/ラム」
実はホラーやスリラーがあんまり得意ではない私ですので、観にいく候補に上がりにくい作品でした。
ちょっと前から気になり出してはいたものの、気力が充実するのを待っていたら公開から既に一ヶ月以上が経ってしまいました。
観終わった感想としては
「LAMB/ラム」の概要
と思っていたのですが、実際観てみると「面白いか分からないけど」と前置きされる理由がわかりました。
人によって好き嫌いがかなり分かれそう
これはちょっと一筋縄ではいかない感じの映画です。
好きな人はとても好きな雰囲気だと思います。しかしハマらない人は退屈に感じてしまうでしょう。
そして困ったことに
観終わった後に感想を話しあいたい
と言う欲求に駆られる映画でもありました。
伏線を回収する部分と、観るものの想像に委ねる部分のバランスが良い映画でした。
日本で公開されてから一ヶ月以上経ってから観に行きましたが、客席は結構埋まっていました。
じわじわと口コミが広がって、人気が継続しているのかもしれないですね。
「LAMB/ラム」のあらすじ
アイスランドで羊飼いを営んでいるイングヴァルとマリアの夫婦。2人は淡々と日々を過ごしていました。
今が幸せなんだと自分たちに言い聞かせるように言葉を交わします。
同じ作業の繰り返しの毎日の中、夫婦の会話は多くはありません。そんな中、非日常の存在が現れました。羊から産まれてきたのです。
2人は羊から産まれた不思議な存在を自分の子供のように育てることにします。「アダ」という名前をつけて育てる謎の存在。
成長していくに従って、夫婦2人の生活には徐々に活気が満ちていきます。しかし、不都合な事を覆い隠した上に成り立つ生活は長くはもちませんでした。
動画は公式っぽいものを引用していますが、観終わってからこの動画を見るとなんだか印象が違うように感じます。
ホラーじゃなかったらなんなんだと言われると説明が難しいのですが、パニックホラー的なスピード感は全くありません。
むしろ淡々と物語が進んでいきます。
「LAMB/ラム」のキャスト・スタッフ
監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
なんと今回の「LAMB/ラム」が初の長編映画とのこと。
ものすごい独特の世界観だったよ。
この監督の次回作は是非観たいと思ったね。
長編映画が初とは言え、20年以上特殊効果などで映画に携わっていたそうです。
アイスランド映画界のベテラン選手。
マリア役:ノオミ・ラパス
「ドラゴンタトゥーの女」で一気に世界的に注目された方ですね。
その後も映画には出続けていますが、個人的にはドラゴンタトゥーのリスベットの印象が強く残っていました。
「LAMB/ラム」での演技はとても良かったと思います。
熱演で心動かされました。
(ビジュアルとしては明らかに異常な状態になっていますが)
イングヴァル役:ヒルミル・スナイル・グズナソン
マリアの夫であるイングヴァル役です。
この人はすごく複雑な立ち位置でした。
複雑な心情をとても的確に演じていたと思います。
マリアと違って盲目的に羊から産まれた存在を受け入れている訳ではなく、マリアの気持ちが分かるからこそ、マリアと同じ立場で謎の存在を愛し始めます。
ペートゥル役:ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
イングヴァルの弟であるペートゥル役
説明がほぼないから仕方ないんですが、この人の心情が一番よく分かりませんでした。
状況についても特に説明はありませんが、おそらく食うに困ってお兄ちゃんを頼ってきたみたいです。
「LAMB/ラム」の感想と考察(ネタバレあり)
特にこの映画はラストのネタバレしちゃうと面白さ半減しちゃうかも・・・。
動物たちが可愛いけど、かわいそう
「LAMB/ラム」には猫や犬も出てきます。
もちろん羊が一番たくさん出てきますが。
この動物たちが結構酷い目にあいますので、動物好きの方は注意が必要です。
個人的に一番きつかったのは、子羊が痛い思いするシーン。
羊の耳にホチキスみたいなやつでタグをつけるシーンがあります。
これは別にいじめてる訳ではなくて、あくまで羊飼いの仕事としてのワンシーンです。
羊って重さ何キロなの?
調べてみたところ、大人の羊で45キロ〜95キロくらいのようです。
だいぶ幅があるみたいですが、さすがに女性1人で片手で運べるくらいの重さではなさそうですね。
羊から産まれた羊ではない何かを自分の子供として育てようと家に連れ帰るマリア。
しかし、お母さん羊と思われる1頭がずーーっと窓の外でメェメェ泣いています。
自分の子供が連れて行かれたことを悲しんでいるのでしょう。
マリアは何度も追い払いますが、羊はその場を離れません。最終的にマリアは羊を猟銃で撃ち殺してしまいました。
映画のために動物を殺したりとか今は無いとは思うんですが、尖ってる映画だと実際に殺しててもおかしく無いですからね。
謎の存在「アダ」のキャラクターが良い
「LAMB/ラム」では、アダに人間の言葉を喋らせていないのが良かったです。
それによってアダの心情を自由に想像する余白が生まれるし、感情を読み取れないことがなんとも言えず不安な気持ちにもなります。
謎の存在「アダ」は喋らないながらも、自分が何者なのかと自問しているようです。
マリアは「アダ」の母親を撃ち殺しているわけですが、それを知っているのか知らないのか。
自分以外の存在をどう思っているのか。
とにかく説明の無いなかで進んでいく不気味さがありました。
「アダ」って結局なんなんだ
「アダ」は羊から産まれた、「体は人間の子供で、頭部は羊」という存在です。
マリアとイングヴァルの二人は昔子供を失くしているという事が物語り中盤で表現されます。
「アダ」という名前は、昔死んだ我が子の名前だったんですね。
これも特にセリフでの説明はありませんが、水難事故で娘を失くしたのであろうシーンが映画の中で表現されます。
一番話したくなるラストシーンを考察
これは思いっきりネタバレなんですが、最終的にイングヴァルは突然現れた「頭は羊で体は人間の大人」に猟銃で撃ち殺されてしまいます。
恐怖の羊人間の視点で描かれるシーンはいくつも挿入されるし、ネコや犬の目線からも存在を暗示されるシーンがたくさんあるんだ。
そして羊人間は子供である「アダ」を連れて山に消えていきます。
このシーンも「あの存在はなんだったんだ?」という物議をかもすと思うのですが、個人的にはその後のイングヴァルの死体を抱きかかえるマリアの心情が気になりました。
イングヴァルの遺体を抱いてひとしきり泣いた後、意外と後ろ髪を引かれずにサッパリした感じなのです。
羊の頭と人間の体は「バフォメット」を表していて、バフォメットが男根の象徴である事から
「マリアは別の男に犯されることによって受胎した。イングヴァルは失ったものの、念願の子供をみごもったと言う前向きな終わり方なのでは?」
と言う感想がありました。
確かにペートゥルが兄の奥さんであるマリアをやたらと性的に誘惑してくるシーンもあるので、何かしら性的な意味あいもあるのかもしれません。
はっきりとした期限は分かっていない。
女性の胸を持つ両性具有で、黒山羊の頭と黒い翼を持っている絵が有名。
とはいえバフォメットは羊じゃなくてヤギの頭と人間の体をもつ悪魔だし、なんだかいまいち飲み込みにくさがありますね。
監督はインタヴューで神話を下敷きにしたわけではないと言っているのですが、女性の名前がマリアだし、何かしらキリスト教徒のつながりは感じます。
ちなみに夜でも外は明るいので、おそらく白夜の時期だと思われます。
夫婦2人が精神的にやられているようにも見えますが、だとしたらどのタイミングで?と言う気もします。
まぁ、羊が出産した異形の子供を母羊を撃ち殺して奪い取るのが既に常軌を逸している気もしますが。
まとめ
面白かったですが、手放しに面白い!と言えるような作品ではありませんでした。
観ている側から積極的に情報を取りに行かないと置いて行かれてしまうので、元気な時に観るべきかと思います。