映画「百花」の評価と感想(ネタばれあり) 

先日公開された映画「百花」を観てきました。

 

以前原作小説も読んでいますが、小説は面白かった。

映画に主演した菅田将暉さんの事は、俳優としてリスペクトしています。

 

なので、結構期待して観に行きました。

 

新宿のTOHOに行ったのは久しぶりですが、朝でも結構人が多いですねー!

あと、いまだにパチンコ屋さんの前にはOPEN前から長蛇の列でした。

 

映画「百花」のあらすじ

とある事件をきっかけに、息子の泉とすれ違うようになった百合子。
泉が社内結婚し子供が産まれようとする頃、百合子は認知症を患う。
泉は母が記憶を失っていく一方で、母との思い出がよみがえってくる。
彼はやがて封印していた思い出に向かい合うことになる。

本作は認知症になった女性・百合子と、その息子である泉の関係を描いています。

 

認知症を主観で描く、というのは確かに難しいと思います。

映画の中で何度か認知症の風景を映像で表現しているのですが、長回しでぐるぐると同じシーンが行ったり来たり。

なんだか不思議な時間でした。

 

途中、家の近くに空き巣が出たということで警察が聞き込みにきます。

空き巣は金目のものは取らないけれど、日記などを盗んでいくとのこと。

思い出=記憶をとっていく泥棒だというのです。

なんだかファンタジーですね。

これは実際に起こったこととして描かれているのですが、はたしてどこまでが実際のことなのか分からないのです。

本当は実際に起こったことではなく、認知症の百合子の脳内で行われた会話なのかもしれません。

映画「百花」の感想(ネタばれあり)

正直なところ、冗長に感じる部分も多かったです

とはいえ、映像ならではの面白みもありました。

 

昔二人で釣りをして、大きな魚を釣った。

という話をしている時。

泉は海で釣りをしたと言っています。

百合子は湖で釣りをしたと言っています。

百合子は楽しそうに泉と会話しているのですが、泉は釣りの記憶違いも認知症によるものと思ってつい苛立ってしまいます。

明確にセリフでは表現していないのですが、ここの魅せ方は秀逸だと思いました。

 

他にも序盤、少年が釣りをしているところを見ながら泉が歩いているシーンですが

菅田将暉さんが「なんとなく橋の手すりを触りながら歩く」という演技をしています。

あれは簡単なようですが、出来る俳優は少ないと思います。

なぜなら、俳優としてリラックスしている状態でないと出ない演技プランだからです。

「意識が別の場所にいっている」という事を説明的でなく表現出来ていると感じました。

 

長澤まさみさんは今まで「コミカルな若い可愛い女の子」という印象の役が多かったと思うのですが、今作ではガラッとイメージを変えていました。

しっかりした大人の女性で、メイクの力もあるかもしれませんが、お母さんという設定が堂に入っていました。

 

 

ストーリーに関してですが、小説の内容を無理やり映画に押し込めたという印象です。

母親である百合子は息子である泉を1年間育児放棄していた過去があります。

そのことが二人をいびつな親子にしてしまっているのですが、なぜ百合子が泉を捨てて男との生活をしていたのか?

また、なぜ泉の元に戻ってきたのか?という部分が、映画を観ていても納得出来ませんでした。

 

あまりにも自分勝手に感じてしまって、百合子に感情移入できません。

もちろんどんな理由があったにせよ、育児放棄を許せるわけではありませんが。

 

 

泉が許せないのもわかるし、百合子の罪悪感も分かる!

となりたいのですが

そりゃ泉は許せないよなぁ、という感想になってしまいます。

むしろそんな過去があったのに、よく泉は今の母親の世話をしているなぁと思いました。

映画「百花」の原作との違い

原作では、百合子が泉の元から出て行ってしまう前に葛藤が描かれていました。

百合子は自分が身籠った泉の出産を反対されます。

それでも自分一人で産んで育てるという決断をします。

なので、実家からの援助も受けられません。

 

自分の人生そのものを泉に捧げるようにして育てていきます。

自分の人生とはなんなのか?

という考えにいたり、衝動的に泉をおいて男と出て行ってしまうのです。

 

映画では百合子が男と出ていくまでの心の動きについては一切触れられていません。

 

また原作では泉が父親になるという事に対しての葛藤も描かれています。

映画でも少し触れていましたが、小説に比べて薄くなっていた印象です。

 

「百花」というタイトルにしても、原作では花に意味を感じられましたが、映画では薄くなっていました。

百合子が一輪挿しの花にこだわっている説明がなかったからでしょうか?

一輪挿しの花は百本それぞれが泉との記憶なのかと思います。

映画「百花」の評価

脚本
演出
演技
映像
総合 2.5

 

正直映画としては期待外れでした。

映像は綺麗だと思いますが。

 

小説が面白かっただけに残念です。

 

 

一応同じ認知症がテーマの舞台なのですが

こちらのファーザーが面白かったのでおすすめです。

最新情報をチェックしよう!