相手のセリフをちゃんと聞くってどういう事?絶対に押さえておきたい聞く技術3選 

苦しんでいるタコ
自分ではちゃんと聞いてるつもりなのに、演出家から「相手のセリフをちゃんと聞いて反応して!」って言われます。どうしたら良いんですか?
あなたの考える「聞いてる」と、演出家の言っている「聞いてる」が違うのが原因だろうね!
俳優の中でも「舞台俳優」にとって、この質問はあるあるなんじゃないでしょうか?
舞台の俳優はまず、相手の話を聞くということを指摘されがちです。
ドラマや映画などの映像ではちゃんと聞いているように見せられる事でも、舞台ではごまかしが効かないということがあります。
もちろん舞台に舞台の難しさがあるように、映像には映像の難しさがありますが。
今回は相手のセリフをちゃんと聞くという事の質問をもらいましたが、演出家に「ちゃんと聞いて」と言われる状況はいくつかあります。
どんな状況があるのか。
どんな時に「聞いていない」と思われてしまうのか。
と言うことで今回は
良い演技とは?押さえておきたい技術3選
というテーマで解説していきたいと思います。
舞台俳優にとってはもちろんですが、映像をメインに活動している俳優にとっても実力派のポジションを目指すなら避けては通れない部分になりますので、ぜひ最後までご覧ください。

相手の話を「本当に」聞く

演技を初めてまもない俳優は、相手のセリフを聞いていないという事が非常に多いです。

自分が喋る事に精一杯で相手のセリフにまで意識がいかないんですね。

ただし、この聞いていないという事にも段階があります。

 

どの段階も観ている人には「聞いていない」と言う印象を与えますので、一つずつ確認してしてみましょう。

シンプルに聞いていない

例えば次のセリフを考えてみてください。

 

女「ねぇ、なにテレビ見てんの?」
男「いや、ちょっと暇だったからさ」

 

なんでもないやり取りですが、自分のセリフをどう言うかにしか意識が行っていない俳優は相手役が例えセリフを間違ったとしても反応できません。

これは実際にレッスンであったことなのですが、相手役にちょっとだけセリフを変えて言ってもらいました。

 

女「ねぇ、なんのテレビ見てんの?」
男「いや、ちょっと暇だったからさ」

 

このやり取りだとおかしいのは分かりますか?
「なんの」と聞かれたら、見ているテレビ番組を答えるべきですよね?

 

しかし男を演じる俳優は「なぜ」テレビを見ていたのかについて話していました。

耳には入っているけれども、本当には聞いていないと言う事です。

相手が話しているときに、頭の中では自分のセリフが出てきているんですね。

このやり取りがあった後に男役の俳優に聞いてみたところ、相手役のセリフが変わっていた事にさえ全く気づいていませんでした。
「聞く」と言う事を掴めたのか、この後は自分の事は置いておいて相手のセリフをしっかり聞くようになりました。
怒っているタコ
相手役がセリフを間違えるなんて事ないよ!もしそうなってもカットになってやり直すだけでしょ!
そうだね。でも、相手の言葉を聞かずにタイミングでセリフを言っているのは分かる人には分かるよ!真実に聞いているわけではなく、聞いているフリをしてるだけだからね!
演技を始めたての俳優は、まずは相手のセリフを正確に聞くと言う事を意識してみましょう。

言葉だけを聞いている

日常会話の中で、我々は言葉のやり取りだけで会話しているわけではありません。

メラビアンの法則というのを聞いたことがあるでしょうか?

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こんにちは。アクティングコーチのイルカ先生です。私は20年間芸能の世界に関わってきました。自分自身も実際に俳優として、プロの世界で演じています。TVドラマ、映画、CM、舞台といった各メディアに出演しています。[…]

こちらでも解説していますので、まだ読んでいない方は見てみてください。

 

先ほどの例で言うと

 

女「(不機嫌に)ねぇ、なにテレビ見てんの?」
男「いや、ちょっと暇だったからさ」

女「(甘えて)ねぇ、なにテレビ見てんの?」
男「いや、ちょっと暇だったからさ」
この二つでは男役の反応が違わなければおかしいですよね?
普段私たちは相手の声色・声の強さ・振る舞いなどから、相手の言葉の裏にあるものを受け取りつつコミュニケーションをしています。
日常生活では自然にやっている事なので、演技の時に受け取っていなければやはり聞いていないと思われてしまうのです。
言葉を正確に聞けるようになったら、次は相手の声・態度などから言葉の裏の意味を聞けるように意識してみましょう。

自分事として聞いていない

俳優は台本のセリフとして相手の言葉を聞いてしまいがちです。

彼氏・彼女に
「あなたのことが好き」
と初めて告白された時の事を思い出してみてください。
告白を受けた経験が無いと言う方も、大好きな誰かに愛を伝えられると言う妄想を楽しんでみてください。
台本の中で「あなたのことが好き」と言われた時、同じように感じますか?
罵りあったり、ケンカをするようなシーンは台本上よく描かれます。
あなたは年に何回くらい誰かと罵りあいますか?何回くらい人と本気でケンカをするでしょうか?
自分の人生に滅多に起こらないような出来事なのに、台本に書いてあると当然のように演じてしまいます。
心当たりのある方は、一度自分に置き換えて考えてみてください。
あなた自身が本当に、実際に、与えられた世界を生きる
と言う覚悟を持って臨みましょう。
自分ごととして聞けていないと違和感があるので、やはり「聞いていない」と言う印象を与えます。

アクションではなくリアクションで演技する

相手のセリフを聞けるようになった後は、その言葉がどのように自分に影響するかが大事になります。

受け取った言葉に対しての反応になっていなければ、やはり演出家からは「聞いていない」と言われるでしょう。

怒っているタコ
全部同じ言葉で言われてもごっちゃになっちゃうよ!
演技指導を専門とする人間なら「聞いていない」のか「反応できていない」のか分からないとダメだけど、演出・監督は俳優育成の為の仕事じゃないからね!

芸術は基本的に感覚的なものなので、同じ言葉を使っていても発する人によって意味は変わってきます。

これが俳優を混乱させる要因になります。

ところでリアクションは反応の3段階目です。
  1. レセプション
  2. アシミレイション
  3. リアクション
この順番ですね。
まずは相手の言葉を聞いて、自分ごととして受け止めます(レセプション)
次に受け取った言葉を理解します(アシミレイション)
そして最後にリアクションと言う行動が生まれるのです。
例えば
「あなたの家が火事になってるよ!」
と言われたとします。
これを聞いて即座に
「えーーー!!!」
とは普通なりません。
まずは聞いてハッとしますよね。肝が冷える感覚があるかもしれません(レセプション)
次に「嘘でしょ?」「そんな事ある?」「家族は無事なのかな」などの思考とともに吸収していきます(アシミレイション)
最後に「家族に電話をかける」「相手に詳しい状況を聞く」「急いで家に帰る」などの行動としてリアクションです。
基本的に与えられた衝撃が大きければ大きいほど、理解に時間がかかるのでリアクションまでの時間は長くなります。

セリフを忘れて世界に飛び込む

演じている間中、頭の中で台本の言葉が流れていませんか?
本来我々はその場で思いついた言葉を使ってコミュニケーションをとっています。
しかし台本を捨てきれずにシーンを演じていると、台本以外の言葉を話す可能性がなくなってしまいます。
そんなこと言ったって、台本通りにやらないとダメなんじゃないの?
もちろん台本通りに演技するよ!でもいくつもの可能性の中からたまたまセリフ通りに話していると言う状態にならないと生きた言葉にはならないんだ!
これもやはり「聞いてない」と言われる可能性があります。
「演技が固い」と表現されることもあるかもしれませんね。
セリフを忘れて世界に飛び込むためには、完璧に台本を覚えておく必要があります。
「あんなにたくさん台本を覚えるなんてすごいね」と俳優以外の方から言われることがありますが
俳優の仕事の中で、セリフ覚えは一番簡単な作業です。
俳優でない方でも、時間さえかければ誰でもできますからね。
まずはセリフを完璧に覚えましょう。
あやふやに覚えていたのでは、怖くてセリフを忘れると言うことはできません。
その上で、セリフを忘れると言う感覚を掴むためのエクササイズを紹介します。
台本をしっかり覚えている2人でやるエクササイズです。
1人は台本の言葉は一言も使わないでください。
あらかじめ別の言葉を用意するのではなく、その場で台本以外の言葉を考えてください。
間が空いてしまっても構いません。
もう1人はその言葉を聞いてそれに対して答えてください。
極力で結構ですが、台本の流れに沿うようにしましょう。
現場でもすぐに試せる簡単なエクササイズです。
やってみれば分かると思いますが、最初は台本以外の言葉で話すのが難しく感じると思います。
それこそがセリフを忘れて演技できていないと言う証拠です。
その場で言葉を生むのは大変だと思いますが、このエクササイズをすることで感覚的に理解できるはずです。

最後に

いかがでしたでしょうか?

 

演技の成長に終わりはありません。

「聞く」と言うことだけをとっても、これからの俳優人生の中で何度も何度も気づきを得るはずです。

 

できるだけ分かりやすく解説したつもりではありますが、人から言われた言葉はそのまま自分の言葉にはなりません。

あなたが日常生活を送る中で、自分の言葉で腑に落とすことが出来た時、本当の意味であなたにとっての力になるはずです。

日常生活でも気を抜けないですね。

 

四六時中、演技を追求しましょう。
自分の芸術を追い求める事に夢中になりましょう。

そうすれば必ず結果はついてきます。

なぜなら、ほとんどの俳優はサボっている時間が長いからです。

 

最後に

50戦50勝で無敗のまま5階級制覇と言うとんでもない記録を作ったプロボクサー、メイウェザーの言葉を引用します。

お前が休んでいる時、俺は練習している。
お前が寝ている時、俺は練習している。
お前が練習している時、もちろん俺も練習している。

我々もメイウェザーに負けてはいられないですね。

 

今日もありがとうございました!

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