先日知り合いのプロデューサーのインスタグラムを見ていましたらお勧めされていた映画があります。
お勧めを素直に聞き入れて、シネマート新宿にて私も「グッドナース」を観てきました。

グッドナースの概要
この映画はノンフィクション小説である「グッド・ナースー医学の実話、狂気、そして殺人」を基に制作されました。
制作はNetflix
公開されて日は経っていませんが、すでにネットフリックスにて配信されています。


病院内の風景はかなりリアルでした。
消毒液の匂いが漂うような空気感でシーンが進んでいきます。
殺人鬼のチャーリー役にはエディ・レッドメイン
そして同僚の看護師にジェシカ・チャスティン
と言う配役です。


エディ・レッドメインはこれまでいろんな人物を演じていますが、どの役も分かりやすく印象を変えているわけではありません。
それでも違和感なく、キャラクターそのものに見えます。
テクニックを悟らせずにキャラクターを演じているのです。

演技ってその世界に生きることだから「演技が上手いなぁ」って思われちゃった時点でその俳優はあんまり上手くないんだよ。極論だけど、演技のうまさって目に見えないものなんだ。

グッドナースのあらすじ(ネタバレなし)
彼女は心臓病を患っているが、1年間勤めた後でないと保険が適用にならないので仕事を休むことが出来ない。
そんな中「このままでは近い将来致命的な発作を起こす可能性が高い」と医師から警告される。
心臓病のことは幼い娘には伝えていない。仕事ばかりで家にほとんどいられないエイミー。まだ幼い娘は、甘えられないことへの不満をエイミーにぶつける。


チャーリーは別の病院での勤務経験もあって即戦力。エイミーの病気のことは病院には言えない。言ったら解雇されてしまうから。
そんな思いでいるエイミーが病気の発作を起こしているところをチャーリーに発見されてしまう。
しかしチャーリーは状況を理解して、エイミーを献身的にサポートしてくれるのだった。

しかし、そんな中で病院の入院患者が不審な死を遂げる。
警察はチャーリーを第一容疑者として捜査を開始。

エイミーは患者の命を守るため、命の危険を顧みずに捜査に協力するのだった。

「グッドナース」のモデルとなったチャールズ・カレンとは?
この映画の原作は小説ですが、その小説は実話がベースになっています。
アメリカのシリアルキラーであるチャールズ・エドモンド・カレン
実際に看護師として働きながら殺人を犯していたのですが、殺害した患者は400人以上と言われています。


映画「グッドナース」では、なぜチャーリーが罪を犯したのか?と言うことは最後まで語られません。

チャールズ・カレンの生い立ち
チャールズ・カレンは8人兄弟の末っ子として産まれました。

そしてカレンが生後7ヶ月の時に亡くなってしまいます。
さらに他の兄弟2人もチャールズが幼い頃に亡くなっているので、子供の時から死にふれる機会は多かったようです。
小さい時は姉のボーイフレンドや友達から常にいじめられていたそうで、9歳の時には自殺をしようとしたこともありました。
その後も自殺未遂は続き、その数は20回に及びます。

高校生1年生の時に、姉の運転する車の交通事故で母親が亡くなりました。
病院が遺体を家に戻さずに火葬したことにすごくショックを受けます。
翌年には高校を中退し、アメリカ海軍に入隊。
水平としては優秀だったそうですが、ここでも仲間からいじめられていたそうです。

なぜか外科医の格好をして任務についてるのが発見されて、怒られたりしてたらしいよ。
その後看護学校に通い、未来の奥さんと出会います。
結婚後半年で子供も産まれて、1997年にカレンはいよいよ病院で働き出しました。

しかしカレン自身が「初めての殺人」として語っているのは、この1年後です。
この頃には犬を虐待したり、カレンの変わった行動に奥さんは不安を感じていたそうです。
その5年後1993年には離婚。
カレンはその後も病院を転々としながら、最終的に9つの病院を渡り歩きました。
「グッドナース」では、16年間での最後の病院となった救急センターが舞台となっています
「グッドナース」の感想(ネタバレあり)

チャーリー役:エディ・レッドメインの演技について
殺人鬼を演じるにあたって、エディ・レッドメインはあくまで淡々としています。
恐ろしい表情を見せるわけでもなく、精神病的なことはほぼしません。

しかし事件が起こるにつれて、状況証拠的には完全にチャーリーが犯人としか思えなくなります。


中盤からはずっと不安な気持ちのままでした。
何も起こらないけど、ずっと何か起きそうなまま進んでいきます。
「グッドナース」の気になったところ
面白い映画なんですが、軽いノリで観れる映画では全然ありません。
全体のトーンが暗く、物語も盛り上がりのポイントみたいなのが少ないので、なんとなく観ていたら
何もなく終わった
と言う印象になるでしょう。


ドラマとしては、もちろん被害にあった遺族の悲劇はあります。
しかし映画を観終わった後にカタルシスを感じるタイプの映画ではありません。

チャーリーはなぜ犯罪を犯したのか?の考察
映画の中では、殺人を犯した事実以外は好青年にしか見えないチャーリー。
どうして400人以上とも言われる連続殺人を犯してしまったんでしょうか?

チャーリーは子供の時からいじめを受けて、力を失っている状態です。
8人兄弟なので、親からの愛情も求めなければ手に入れられなかったのかもしれません。

父親がいない家庭の中で、母親からの愛情は幼いこどもにとって唯一無二の欲求です。
母親に自分を見て欲しいのに、何をやっても愛情が向けられない。
と言うことがあったとすれば、チャーリーのトラウマになったのではないかと思います。
そんな幼少期を過ごしたチャーリーは、自分を愛してくれなかった母親に対して無意識の中で復習したい気持ちがあったのかもしれません。
結局母親に愛情をかけられないまま、母親はチャーリーを残して亡くなってしまいます。
しかも、母親を看取ることもできず母親の遺体と再会もできませんでした。

そうだったとしても、もちろん許されることではありませんが。
劇中でもチャーリーは母親のことに対して過剰に反応します。
またどうしてこんな犯罪を犯したのか?と言う質問に対して「誰も止めなかったから」と答えていました。

しかし被害者は末期の患者ではなく、回復に向かっている人がほとんどだったそうです。
「グッドナース」のまとめ チャーリーのその後
カレンはこの物語の後、2005年に刑務所の中で元恋人からの手紙を受け取ります。
その恋人の娘は人工透析を受けていたのですが、腎臓が悪化してしまい死を待つ状態だったとのこと。
腎臓の移植手術が必要ですが、血液型が特殊で移植ができなかったそうです。

この時までカレンは裁判への出廷を拒否していたので「判決が出ていない」と言う理由で恋人の娘への移植手術は認められませんでした。
しかし恋人からの手紙を受けてカレンは裁判に出廷する決意をします。

2006年にカレンの腎臓が摘出されて、無事移植手術が行われます。
そして現在、カレンは仮釈放の予定もないままにニュージャージー州の刑務所に服役しているそうです。
今回の「グッドナース」
1人で時間がある時に集中してみるには、とても見応えのある映画かと思います。

しっかり物語の世界に入れる時間を作って集中して観ると、ざわざわを体験できるので良い時間になると思います。