劇団ひとりさんが12年ぶりの長編小説を書き下ろしました。
芸人さんて多才な方が多くて、職業として本当に尊敬しています。

そんな劇団ひとりさんが「これを小説にしなかったら逃げになる」と言う思いで書き上げたのが今回の「浅草ルンタッタ」だそうで、なんと浅草キッドの撮影中に執筆していたそうです。
浅草キッドもすごく良かったですよねー。
どう考えても忙しいであろう時期にこの小説の執筆を始めたと言うガッツにも驚きです。
今回は
- 浅草ルンタッタのあらすじ
- 浅草ルンタッタの感想
- 浅草オペラとは?
という流れでお伝えしていきたいと思います。
浅草ルンタッタのあらすじ
幼少期から謡に踊りといった遊女としての英才教育を受けるお雪。そんな環境で育つお雪が浅草の舞台に興味を持つのは必然だった。ある日お雪は忍び込んだ芝居古屋で見たことも無い出し物を見る。のちに「浅草オペラ」と言われるミュージカル調の出し物だった。

しかし、ずっと続かと思われた幸せは偶然の重なりによって脆くも崩れていく。。。
帯にある「圧倒的祝祭に満ちた物語」という文句が、まさしくその通りというか。

浅草ルンタッタのあらすじ(ネタバレあり)
まだ読んでいない方はお気をつけください。

- ネタバレ
- 「燕屋」は政府非公認の売春宿だ。営業していくために、警察である中村という男に袖の下を渡していた。中村は賄賂を受け取りがてら、来れば必ず金も払わずに女を抱く。
ある日、中村は9歳のお雪の服を脱がせてイタズラしようとした。その現場を見て逆上する千代だったが、力では敵わずに馬乗りになって暴力をふるわれる。このままでは千代の命が危ないと思ったお雪は、咄嗟に持っていたナイフで中村を刺してしまった。捕まって投獄される千代と、千代を助けた鈴江。
お雪はなんとか逃げのびたが、どこに行けば良いか分からず、良く忍び込んでいた芝居小屋の天井に隠れる。自分のせいで母親代わりの千代は捕まってしまった。なんのために生きているのか分からなくなってしまいそうなお雪の心をなんとか正常でいさせたのは、隙間から聞こえる浅草オペラの演目だった。お雪は昼間みた演目を夜誰もいなくなってから毎日練習していた。
食べ物は楽屋の食い残しの弁当で繋ぎ、そのままなんと7年の間お雪は屋根裏で過ごしていた。いつの日かまた「燕屋」のみんなに出し物を披露出来る日を夢みて。。。お雪は母親代わりの千代に生きて会うことができるのか?
自分が生きる意味を見つけることができるのか?
いるかコーチ 登場人物が愛に溢れた人たちでみんな魅力的!嫌な人はほとんど出てこないんだよね。劇団ひとりさんは浅草の文化が本当に好きなんだなぁって感じるよ。あらすじでは省略しましたが、福子や信夫と言ったキャラクターも登場します。
浅草ルンタッタの人物相関図
とにかくほとんど全員お雪のことが大好きです。大変な出生の中、良いこに育ったお雪の周りには愛してくれる大人たちがたくさんいたんですね。
浅草ルンタッタの感想
劇団ひとりさんの作品はエンターテイメントの精神がとても強いです。どの作品を見ても、人を楽しませたいと言う気持ちを強く感じます。

今回の「浅草ルンタッタ」にもやはり人を楽しませたい、面白い物語を作りたいと言う情熱はひしひしと感じました。テーマとなっている「浅草オペラ」は後ほど紹介しますが、考え方が劇団ひとりさんに近い気がしますね。

大変なカロリーを使って作り上げた作品というのは、それだけで強い作品になります。小劇場の舞台なんかでも、技量はまだまだだけど面白いって作品はありますよね。
むしろそういった魂のこもった作品こそが、人の心を動かせるのだと思います。
今回の浅草ルンタッタは、読んでいる時点で映像が浮かびます。時代劇だしミュージカルだし、予算はかなりかかりそうな気はしますがぜひ映像化して欲しいですね。
街全体が踊り出す「ラ・ラ・ランド」の様な作品になるんじゃないでしょうか。
劇中では、視点がコロコロ変わります。
作者の視点で客観的に語っていたかと思いきや、次の瞬間には登場人物が主観的に語ったり、心の声なのか実際の声なのかも判然としない部分もあります。
にも関わらず読みやすいのです。全く混乱しません。

浅草ルンタッタの舞台となった浅草オペラとは?
実は私も、浅草ルンタッタを読んで「浅草オペラ」という文化があったことを初めて知りました。
それもそのはずで、浅草オペラはものすごい人気を博したものの、関東大震災によって約7年で終焉をむかえたのです。

明治時代に政府は西洋に追いつこうとして、オペラを日本で制作しようとしました。そのために外国人のローシーを呼んで本格的な指導を受けます。
しかし本格的なオペラは日本には残念ながら根付くことはありませんでした。
その後ローシーの元で学んだ俳優が浅草の舞台に立つ様になり、オペラの技術が浅草に取り入れられました。浅草ではエンターテイメントとして観客を楽しませる事だけが正義だったので、魅せ場だけを切り取ってダイジェストの様な上演をしていたのです。
そのことが庶民には受け入れやすかったのでしょう。

まとめ
今回は「浅草ルンタッタ」の書評を書いてみました。
この作品は掛け値なしに面白いのですが、これを書いている時点ではまだあまり話題にはなっていないみたいですね。なんだか勿体無い気がします。
しっかり泣けるし、テンポ良く読めるので、普段あまり本を読まない人にもおすすめです。
俳優の方は映画化が決まる前に読んでおいたらいかがでしょう?
他の俳優よりも一歩早めに役の雰囲気を掴んでおくことができますよ。